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障害者差別解消法が施行 建設的対話のツールとしての解消法

2016/05/24 09:58

月刊杜の伝言板ゆるる2016年5月号

障害者差別解消法が施行
建設的対話のツールとしての解消法
=とっておきの音楽祭実行委員会SENDAI 実行委員長 伊藤清市=


社会的障壁

この4月から障害者差別解消法(以下、解消法)が施行されました。障害のある人にとって日常生活や
社会生活を送る上で障壁になるものを「社会的障壁」といい、解消法では①社会における事物(利用で
きない、もしくはし難い設備、施設)、②制度(利用できない、もしくはし難い制度)、③慣行(障害の
ある人を意識していない慣習や文化)、④観念(障害のある人への予断や偏見等)の4つを定義してお
り、障害とは疾患等の医学的な問題だけではなく、その人を取り巻く環境の問題とされています。

「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」

こうした社会的障壁を取り除く目的で成立した解消法では、障害のある人に対する「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」が禁止されます。

不当な差別的取り扱いとは、正当な理由もなく障害があるということだけでサービスの提供を拒否、制限、または障害のない人にはない条件をつけたりすることです。具体的には、レストランへの入店を車いすということで断られた。アパートやマンションを借りようとして、障害があることを伝えると、そのことを理由に拒否された等があります。

一方、合理的配慮の不提供とは、障害のある人から社会的障壁を取り除くことを求める意思の表明があったにも関わらず、そのための必要かつ合理的な配慮(対応)をしないことです。

意思表明には、自分の意思を伝えることが難しい障害のある人に代わり、その家族、介助者、関係者等が表明することも含まれます。具体的には、駅でホームの場所を駅員に尋ねたが、わかるように説明してもらえなかった。耳が不自由なので、会議に手話通訳者が必要だと申し出たが、用意してもらえなかった等があります。

逆に差別には当たらない(差別的取り扱いがある、または合理的配慮がなされなくてもやむを得ないとされる)例として、①エレベーターの設置が経営上どうしても難しい等の、事業者に「過重な負担」がかかる場合、②合理的配慮を求める意思の表明がない場合、③物事が本質的に変わってしまう場合、④障害のある人への優遇等があります。

しかしながらいずれも、差別に当たらないとする正当な理由を障害のある人に説明する必要があるとともに、過重な負担という言葉を口実にしないようにしなければなりません。

法律の対象範囲

この2つの具体的な対応として、国は基本指針を定め、各省庁では行政機関を対象とする対応要領と、所管する民間事業者を対象とする対応指針が策定されています。不当な差別的取り扱いの禁止は行政機関、民間事業者ともに義務ですが、合理的配慮の不提供の禁止については行政機関で義務化されるのに対して、民間事業者では努力義務になります。

民間事業者の範囲には企業やNPO法人はもちろんのこと、任意団体や大学のサークルも対象となります。ただし、個人間の思想信条、言論、表現までは対象になりません。

他にも、差別された時の相談窓口の設置や、差別解消を効果的に進めるための国や地方公共団体のネットワーク「障害者差別解消支援地域協議会」を組織することができると規定されています。さらには、民間事業者に対し、報告を求め、または助言、指導若しくは勧告をすることができるとされており、差別を解消する担保が期待されます。

なお、雇用における差別については、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」の定めるところによります。


▲障害のある人もない人も一緒になって

仙台市障害者差別解消条例

解消法の施行と時を同じくして、仙台市でも「仙台市障害を理由とする差別をなくし障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちをつくる条例」(通称 仙台市障害者差別解消条例)が施行されました。

法律があるなら条例をつくる必要はないのではと思われるかもしれませんが、解消法の附帯決議では、地方自治体が法律の「上乗せ横出し」の条例をつくることを可能としており、現在、全国各地で同様の条例が成立施行されるとともに、手話を言語として位置付け、聴覚障害者の社会参加を促進するための「手話言語条例」を制定する自治体も増えています。

上乗せとは、法律による基準より厳しい基準を課したもの。横出しとは、法律により規制の対象としていない分野等に対して、新たに規制の対象を設けるもので、仙台市の条例では、障害があるとともに女性であるという、複合差別に対しての明記や、勧告に従わない事業者名を公表する等、法律より重い処分が課せられています。

また、仙台市の条例に特筆すべきなのはその名称。これまで全国の条例では「共に生きる」や「暮らしやすい社会」等、共生社会の理想は汲み取れるけれども、差別解消という明確な目的が市民に伝わりにくいという声が当事者から上がっていました。その中で仙台市が「差別をなくす」と明記したことは、これからの全国の条例に一石を投じることになるのではないでしょうか。

市民に期待すること

法律や条例に「差別」という名称がつくため「腫れ物に触れる」というイメージがあるかもしれませんが、私はむしろ、障害のある人及び関係者と事業者の「建設的な対話」のツールとして活用することを期待しています。

例えば先述した合理的配慮の例を挙げると、自閉症の人がクラシックを鑑賞したい場合、これまでは漠然とした不安で主催者側が断っていたわけですが、落ち着いて聴けるような席の確保(合理的配慮)はもちろんのこと、盛り上がると立ち上がってしまう場合には、ホールの聴音室や控え室での鑑賞の提案(建設的な対話)も選択肢になります。

つまりは、これまでのような「できる、できない」の二者択一ではなく、どうしたら本人の願いを叶えながら観客との調和がとれるかを、当事者、関係者、事業者が知恵を絞って考えることが重要になります。市民には、合理的配慮を望む当事者の声に一層耳を傾け、差別の解消に向けて様々なアイディアを共に創出することを切に期待します。

最後に、解消法第15条には、差別の解消について国民の理解と関心を深める等の啓発活動について謳われています。手前味噌ではありますが、私が実行委員長を務めています「とっておきの音楽祭」もこの15年もの間、障害のある人もない人も共に楽しめるイベントとして様々な啓発活動を行ってまいりました。法律や条例の施行で、私たちもさらなる啓発に務め、共生社会の実現に向けて邁進していきたいと思います。

とっておきの音楽祭実行委員会SENDAI
〒980-0014 仙台市青葉区本町2-9-3 6階
●TEL:022-265-0980
●FAX:022-716-5717
●URL:http://totteokino-ongakusai.jp/


月刊杜の伝言板ゆるる2016年5月号 

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