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アートに出会うこと = アート・ミーツ 活動の原点は楽しさ、それを引き出す出会い体験

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2016/10/18 14:15

アートに出会うこと = アート・ミーツ 活動の原点は楽しさ、それを引き出す出会い体験
[寄稿] 泉田 文陽(認定NPO法人ばざーる太白社会事業センター・ 略称:ビートスイッチ)


ひとは、「アート」によって心地よさや感動が得られ、喜びや幸福感に包まれた時を過ごすことも可能となります。このような作用を療法として取り入れている医療や介護の現場事例もたくさんあります。

「アート」に出会うことで人は内面から人生の豊かさを広げることができるのではないでしょうか。

何人もこの喜びに出会い楽しむことに、社会的なバリアがあってはならないと思います。

ビートスイッチ鑑賞ツアーの原点

2010年6月から開始した、視覚障がい者のための美術鑑賞の検討会で企画を進め実行するため協議を進めていた折、個人的に出席したアートミーツケア学会仙台大会(2010年12月開催)の分科会で、《「見る」ことを超えて》と題し、日野陽子先生(アートミーツケア学会理事)、光島貴之さん(美術家、鍼灸師)、阿部こずえさん(ミュージアム・アクセス・ビュー代表)の講演に参加することが出来ました。この時、視覚に障がいのある方と一緒に行う平面鑑賞を体験し、「言葉による鑑賞ツアー」を知ることになりました。

この「言葉による鑑賞ツアー」は、2002年より関西で活動しているミュージアム・アクセス・ビュー(京都の団体)が行っているもので、アメリア・アレナスの対話による鑑賞法を参考に、目の見えない人、見えにくい人とともに、気軽にアートを楽しむというコンセプトで、「言葉による鑑賞ツアー」と「創作ワークショップ」を主な活動として年数回開催されていました。

初めての鑑賞ツアー

そこで、翌年2011年2月にはミュージアム・アクセス・ビューのある京都を訪ね、仙台で活動を始めたいとご挨拶に伺い快諾していただきました。その後、2カ月に1度の検討会は東日本大震災で一時中断を余儀なくされましたが、2011年6月に再開し、その時から「アート・ミーツ」を部会名として準備を進めました。そして、2011年11月に初めての鑑賞ツアーを開催することができました。

アート・ミーツ部会で開催する鑑賞ツアーでは、視覚に障がいのある人と晴眼者がグループとなり、絵画などの作品について自分の言葉で語り合いながら共に楽しむこと、その後、いっしょに食事をしながら感想などを聞くことが活動の主体となります。

第1回鑑賞ツアーは、2011年11月、宮城県美術館で開催された「フェルメールからのラブレター展」の鑑賞ツアーでした。参加者は、見えにくい人3名、見える人4名で、2時間かけて絵画を鑑賞。終了後は、美術館内レストランでランチを食べながら1時間ほど感想を話し、楽しい気分で終了しました。

▲第1回フェルメール展


▲美術館内レストラントーク

鑑賞は難しい?

でも、「自分の話していることはこれでいいのだろうか?」や、「美術の専門的な知識を持っていないのに、説明できるのだろうか?勝手に話してもよいのだろうか?」また、「何を話せばよいのか分からない」等々の疑問が出るでしょう。視覚に障がいのある人にとって、「絵の説明を受けても本当ではないのだから、手触りでの実感を得たいと思う」「説明者は伝えようと懸命になり、くどくなってしまっても、〈もう結構です〉とは言えない不自由さが生じる」等の不満もあるでしょう。

視覚に障がいのある人は見えないからと、美術鑑賞を諦めてしまいがちです。一方、晴眼者はどうしても、「見えているからには正確に話さなければならない」という使命感を負ってしまう方もいらっしゃいます。でも、美術を楽しむために、作品の正しい見方などは元々無いのです。すべての枠を取り払って出会いを楽しんでみてください。

鑑賞ツアー、4つの要素

視覚に障がいを持つ方と一緒にアートを鑑賞するアクティビティでは、従来の触れることで感じ取る方法とは違い、次の要素が育まれると考えています。


鑑賞ツアーは視覚に障がいのある人と晴眼者が少人数のグループに分かれて会場内を巡ります。同じ作品なのに、そこにはグループ毎に異なる会話が展開していきます。居合わせた人の感性によって生まれた対話を通しての鑑賞だからです。そして、そのグループ独自の鑑賞がまさに「アートする」活動なのであり、楽しさの原点となっています。

アートとの出会いは、それぞれの心の中の栄養や勇気となる、豊かな「出会い体験」として記憶の壺に残っていくことが願われます。


▲石巻アート展

認定NPO法人ばざーる太白社会事業センター(ビートスイッチ)
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月刊杜の伝言板ゆるる2016年10月号

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