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栗原のまちづくり・地域づくり NPO法人Azuma-re

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2017/04/12 12:10

栗原のまちづくり・地域づくり NPO法人Azuma-re

栗原市は、宮城県の北西部にあり、北は岩手県、西は秋田県を境にもつ、県内の市で最大の面積を持つ、農業を始めとした一次産業が盛んな地域です。国定公園の指定をもつ栗駒山や、ラムサール条約登録の伊豆沼など、大自然にもめぐまれています。あまり知られていませんが、実は畜産も盛んで仙台牛の4割近くが栗原産だということを知っていましたか?

また、栗原市は分散型の市とも言えます。2005年に10町村が合併して出来た市で、1万2,000人規模の町が3つ、7,000人規模の町が3つ、4,000人規模の町が2つ、それ以下が2つ。そしてそれぞれの町村の中心地間は車で20~40分の距離があり、広大な土地に10の中小規模の町が、点在しています。

街(地域コミュニティ)は人で形成されている

栗原市の統計によると栗原市の総人口は、2011年から2016年まで(5年間)で75,760人から70,530人と、5,230人減となり、年に約1,000人ずつ減り続けています。

しかし総人口が減ることは大きな問題ではありません。問題は0歳~64歳の人口です。これまで年に約1,380人ずつ減り続け、65歳以上の人口は年に約335人ずつ増えています。

総人口の減少だけに目が行きがちですが、実はそれを上回る推移で0歳~64歳の人口が減り続けているのです。この現象は、昭和22年から24年生まれの団塊の世代が75歳以上となる8年後(2025年)にピークを迎えると言われています。

現象がすすんで行くと社会・地域にどういう影響があるのでしょうか。すべての原因が減少によるものとは言えませんが、いま私が暮らしている地域で考えてみると、50件ほどあった個人商店は今や8件となり、買物は隣地区の大型ショッピングセンターまで行かねばなりません。車で買い物にいけない高齢者は大変です。

店がなくなったことで、日常で住民同士が挨拶や雑談するコミュニケーションの場もなくなりました。盆踊りや地区の運動会が無くなり、住民同士が力を合わせて共同作業を楽しむ機会が無くなりました。小学校が閉校となり、子どもと地域の繋がりが無くなってしまいました。空き家が増え、景観・防犯・環境上あまり良くありません。近隣の約6~7割が高齢者の1人または2人暮らしで、10年、20年後はどうなってしまうか不安です。

こういった問題は、私の地域だけでなく栗原市全域でも、全国の地方でも同様に起きています。

▲商店街や地域を活性化する「六日町通り商店街プロジェクト」進行中

街(地域コミュニティ)は人で形成されています。お金・建造物で形成されているのではありません。いくらお金やインフラが充実していても、人がいなければそれは街ではなく単なる「土地」「建造物」となります。15歳から64歳の生産年齢人口が減るということは、結婚・出産・仕事といった人間社会の骨格を成す人材がいなくなるということです。そしてそれは、街(地域コミュニティ)の消滅に繋がります。

▲栗原のまちづくりを考えるCafe Azuma-re

今までにない新しいつながり・取り組み

お金やマンパワーが減っていく縮小社会の中で、〝多様・複雑な課題を解決するにはどうすれば良いか〟はっきり言ってそんな難しいことは私たちにはわかりません。しかし、その現状の中で、自分たちが出来る最善策をさがすことは出来ます。

一つの例として、昨年、私たちNPO法人Azuma-reと地元ホテルや企業、高校生がつながり、高校生がプランナーとなって地域資源を活用したウェディングプランを考えるプロジェクト「高校生未来ミーティング~愛で栗原を熱くしろ!~」を開催しました。

▲“栗原ならでは”のウェディングプランを練る

このプロジェクトを通して、高校生たちは栗原の魅力を再発見し、企画力・プレゼン力・主体性を育みました。企業はCSV(※注1)という新しい価値とビジネスプラン、ブランディング(※注2)を得ました。地域は、地元企業の発展と、高校生という地域の未来を担う人材の育成とシビックプライド(※注3)の醸成を図ることができました。

この他にも、行政・商店街組合・商工会・NPOがつながり、地域おこし協力隊制度を活用したプロジェクトで中心市街地の活性化を実施しています。プロジェクトと、その他の新しい動きも生まれ、商店街に様々な相乗効果が生まれつつあります。

この2つのプロジェクトは、どちらも今までにない新しいつながりから生まれた新しい企画です。人口も経済も右肩あがりの時代では、こういったプロジェクトは生まれなかったと思います。人口も経済も縮小していく社会では、企業も行政も地域も、今までと同じやり方を続けていては生き残れません。大手企業ほどそれをいち早く実感して動いています。

企業も行政もNPOも、街(地域コミュニティ)が無くなってしまったら、元も子もありません。街を元気にするという共通の目的に対して、市民・行政・企業・NPOなどの多様なステークホルダーがそれぞれのメリットとなる利益を得ながら、それぞれが得意とする術を出し合い目的を達成する。この方法こそ今、必用で有効な手法だと思います。

そして、そのチャンスを逃さないことが重要です。だから、まちづくり・地域づくりで成功している地域には、そういった人材や組織がたくさん在るし、集まってもきます。

人材とマネージメント

「いま栗原に何が必用ですか?」と聞かれたら、私は「人材」と「マネージメント力」と答えます。企業・行政・商店・地域・NPO・学校・教育・福祉・農業・その他すべて、人間がおこなっています。

そして、人間があつまり活動すれば、組織マネージメントが必用となります。また、いくら個人のスキルが高くとも、それを発揮できない組織では宝の持ち腐れとなってしまいます。個人と組織マネージメント、両方のスキルが向上することで、事業や活動が成功する確率が高くなり、間違いなく街は良くなるはずです。そして、そうなるためには、素晴らしい人・活動・物・学びに出会う場を、たくさんつくることが必要です。同時にそういった場をつくれる人材を育成することも必要です。

2017年度は、場づくりが出来る人材を育成するため、私たち自身が魅力ある有効な活動を行って行くと同時に、きっかけづくり・ノウハウを学ぶセミナー、仲間づくりの交流会等の事業を、たくさんの人に力を貸してもらい協力しあいながらおこなっていきたいと思います。

※ 注1「CSV 」:Creating Shared Value=共通価値の創造の略称
※ 注2「ブランディング」:ブランドに対する共感や信頼など、顧客にとっての価値を高めていくマーケティング戦略
※注3「シビックプライド」:都市に対する誇りや愛着。日本語の郷土愛とは少し違うニュアンスを持つ。自分自身が都市を構成する一員であると自覚し、都市をより良い場所にするための取り組みに関わろうとする当事者意識のこと。

NPO法人Azuma-re
〒987-2216 栗原市築館伊豆2-6-1
市民活動支援センター貸事務室2
●TEL/FAX: 0228-22-1905
●E-mail:azumare2009@gmail.com
●URL:http://www.azuma-re.net/

月刊杜の伝言板ゆるる2017年4月号

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