- 【つながりの経済学】第1回 つながりの経済学とは
- 【つながりの経済学】第2回 東日本大震災と企業間のつながり
- 【つながりの経済学】第3回 つながりと企業の行動
- 【つながりの経済学】第5回 つながりの経済学の分析対象
【つながりの経済学】第4回 なぜ中心性が重要なのか
2016/04/21 10:03
第4回 なぜ中心性が重要なのか
では、つながりの中で中心的な企業とはいったいどういうことを示しており、それがなぜ企業の海外進出の意思決定に影響するのでしょうか。
少し身近な例で説明してみたいと思います。皆さんがあるパーティーに招待されたときのことを考えてみましょう。もし皆さんの友人(企業の話だと取引先ですね)もそのパーティーに参加すれば、話し相手がいますからパーティーをより楽しむことができます。それに対して友人がひとりも参加しなければ話し相手がおらず寂しい思いをすることになるかもしれません。さらに、その友人にも皆さんの他に友人がおり、彼らが参加するかどうかが、その友人がパーティーに参加するかどうかの意思決定に影響しています。
ここで友人がたくさんいる人を考えましょう。友人がたくさんいるというのは、その人が友人のつながりにおいて中心性が高いこと、つまりつながりのなかで中心的な位置にいることを意味します。
このような人はパーティーに参加したときに友人のうちのだれかとは会える確率が高くなり、寂しい思いをする可能性は低くなりますので参加した方がいいわけです。実はさらに、自分自身にはそれほど友人が多くなくても、友人の多い友人を持つ人も実はパーティーに参加したほうがいいのです。
なぜなら、友人の多い友人は先ほどの理由から、パーティーに参加する確率は高いでしょう。ですから自分がパーティーに参加したときにその友人の多い友人には会える確率は高いため、寂しい思いをする可能性は低くなるのです。この、友人の多い友人がいるという状況、これもつながりのなかでの中心性が高いことを意味しているのです。(図3は以上の説明の直観です)
以上がパーティーを例にした、我々の分析の直観ですが、我々の研究によるとこのようなストーリーは実は企業の海外進出行動にとてもよく当てはまっていることが示されています。
もちろん企業の海外進出には、自社の製品に対し、現地で十分な需要があることや、進出のための資金、情報が十分にあることなど、企業間のつながり以外の様々な要因があります。これらのその他の影響を排除した上でも、中心性の高い企業ほどより海外進出を行う確率が高いことが示されました。
また、このストーリーが正しければ、生産において、よりたくさんの企業との取引を行わなくてはならない産業や地域において、より企業間のつながりが重要であることが予想されますが、実際にそういうところで中心性、つまり企業のつながりの果たす役割がより強いことなどがわかりました。
図4は実際の企業間の取引関係を示したものですが、中心性の高い企業は円を大きく表示しています。このような企業はたくさんの取引先をもち、またたくさんの取引先を持つ企業とつながりを持っているのです。
図4ある都道府県の企業間のつながりの関係。円の大きさが大きい企業はその中心性が高いことを示している。
このように、企業間のつながりは、平常時の企業の意思決定にも大きな影響を与えているのです。
次回は「第5回 つながりの経済学の分析対象」です。
配信日程:4月22日(金) 予定
【プロフィール】
東北大学大学院経済学研究科准教授 中島 賢太郎(なかじま けんたろう)
2003年東京大学経済学部卒業、2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)
東北大学、一橋大学を経て、2011年4月より現職。
専門は空間経済学・都市経済学・経済発展論。これらの分野を中心に、データを用いた統計的実証研究を行っている。
では、つながりの中で中心的な企業とはいったいどういうことを示しており、それがなぜ企業の海外進出の意思決定に影響するのでしょうか。
少し身近な例で説明してみたいと思います。皆さんがあるパーティーに招待されたときのことを考えてみましょう。もし皆さんの友人(企業の話だと取引先ですね)もそのパーティーに参加すれば、話し相手がいますからパーティーをより楽しむことができます。それに対して友人がひとりも参加しなければ話し相手がおらず寂しい思いをすることになるかもしれません。さらに、その友人にも皆さんの他に友人がおり、彼らが参加するかどうかが、その友人がパーティーに参加するかどうかの意思決定に影響しています。
ここで友人がたくさんいる人を考えましょう。友人がたくさんいるというのは、その人が友人のつながりにおいて中心性が高いこと、つまりつながりのなかで中心的な位置にいることを意味します。
このような人はパーティーに参加したときに友人のうちのだれかとは会える確率が高くなり、寂しい思いをする可能性は低くなりますので参加した方がいいわけです。実はさらに、自分自身にはそれほど友人が多くなくても、友人の多い友人を持つ人も実はパーティーに参加したほうがいいのです。
なぜなら、友人の多い友人は先ほどの理由から、パーティーに参加する確率は高いでしょう。ですから自分がパーティーに参加したときにその友人の多い友人には会える確率は高いため、寂しい思いをする可能性は低くなるのです。この、友人の多い友人がいるという状況、これもつながりのなかでの中心性が高いことを意味しているのです。(図3は以上の説明の直観です)
以上がパーティーを例にした、我々の分析の直観ですが、我々の研究によるとこのようなストーリーは実は企業の海外進出行動にとてもよく当てはまっていることが示されています。
もちろん企業の海外進出には、自社の製品に対し、現地で十分な需要があることや、進出のための資金、情報が十分にあることなど、企業間のつながり以外の様々な要因があります。これらのその他の影響を排除した上でも、中心性の高い企業ほどより海外進出を行う確率が高いことが示されました。
また、このストーリーが正しければ、生産において、よりたくさんの企業との取引を行わなくてはならない産業や地域において、より企業間のつながりが重要であることが予想されますが、実際にそういうところで中心性、つまり企業のつながりの果たす役割がより強いことなどがわかりました。
図4は実際の企業間の取引関係を示したものですが、中心性の高い企業は円を大きく表示しています。このような企業はたくさんの取引先をもち、またたくさんの取引先を持つ企業とつながりを持っているのです。
図4ある都道府県の企業間のつながりの関係。円の大きさが大きい企業はその中心性が高いことを示している。
このように、企業間のつながりは、平常時の企業の意思決定にも大きな影響を与えているのです。
次回は「第5回 つながりの経済学の分析対象」です。
配信日程:4月22日(金) 予定
【プロフィール】
東北大学大学院経済学研究科准教授 中島 賢太郎(なかじま けんたろう)
2003年東京大学経済学部卒業、2008年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)
東北大学、一橋大学を経て、2011年4月より現職。
専門は空間経済学・都市経済学・経済発展論。これらの分野を中心に、データを用いた統計的実証研究を行っている。