放課後、自分を表現しよう―絵を描いたり、粘土で形を作ったり―
その他
2016/10/20 11:01
放課後、自分を表現しよう―絵を描いたり、粘土で形を作ったり―
NPO法人ぞうさんの家
小学・中学・高校生の子どもたちには、学校生活以外の放課後を過ごす場として、それぞれの家庭はもちろん、児童館や日々の習い事など、様々な居場所があります。そこでの経験や人との出会いを通して、日々成長していきます。
働く親にとって心配な放課後を託している放課後児童クラブ。登録している児童数は、現在、仙台市内で8,916人にのぼります。(厚生労働省平成27年度調査)
▲第4期仙台市障害福祉計画(平成27年〜29年度)より
一方、知的・情緒・発達障がいなどの障がいがある子どもたちは「放課後等デイサービス」を行う事業所(居場所)で過ごすことが多く、東日本大震災以降、少しずつ減少している仙台市全体児童数に対して、特別支援学級に在籍する児童数は増加傾向にあり、放課後の居場所がますます必要とされています。仙台市内には、今年の8月で95ヶ所の事業所ができています。
造型活動とともに
放課後等デイサービスは、平成24年4月に児童福祉法で定められました。障がいがある小学生・中学生・高校生を中心に、放課後や夏休みなどの長期休暇期間に利用する居場所です。
学校や家庭とは異なる場所で、様々な世代との交流、創作のほか、一人ひとりに合わせた支援を行っています。それぞれの事業所は、社会福祉法人やNPO法人、企業など多様な形態ですが、一人ひとりの子どもたちのためを考えて日々活動しています。
中には、放課後の時間を造型活動という分野に特化して、ものづくりや絵画あそびを通して、「豊かにゆっくりと過ごしてほしい」をテーマにした放課後等デイサービスを行っているNPO法人ぞうさんの家があります。
▲作品であふれる「ぞうさんの家」
表現に障がいは関係ない
ぞうさんの家が生まれたきっかけは、理事長である木村秀三さんが退職後に、教師をしていた当時から取り組んでいた陶芸を活かし、陶芸アトリエ「やきものぞうさん」を開設したことから始まりました。
障がいのある人もない人も一緒に親子で陶芸を楽しむ「ファミリーにこにこクラブ」を開設し、その活動を通して、木村さんは、「表現には障がいの有無は関係がない」ことを痛感しました。
そこで自分たちの強みである創作活動を活かし、学校で頑張ってきた子どもたちが、放課後ゆっくりとものづくりに触れる場所、また自然や生活を学ぶ場所をと、今年4月仙台市宮城野区小田原で、ぞうさんの家の活動を始めました。
職員には、木村さんをはじめ、障がいのある方々と接してきた経験を持つ村上としみさん、そして障がいのある子どもたちに絵画指導や表現の場をつくっている「ぼーだれすアートくらぶBACせんだい」のメンバーも支援員として加わり、子どもたちの日々の活動をサポートしています。
子どもたちの「したい」を引き出す
ぞうさんの家が子どもたちに行うサポートで大切にしていることは、「子どもの楽しい空間をつくること」です。創作活動を日々プログラム化し、子どもたちに強制して何かを製作させるのではなく、子どもたちから思い思いに「したい」と思うことを聞き取り、その活動をしています。
「子どもたちは、学校で十分勉強し、集団での活動をしてきたはず。時には注意されることもあるでしょう。そのうえ放課後まで大人から『これをしなさい』と言われ続けたら、疲れてしまう。そんな場所に来たいと思わないのではと感じて。この場所では、表現活動を通して子どもたち一人ひとりの「したい」と思う気持ちを形にし、その気持ちを認めることで少しずつ自己肯定感を高めていきたい」と木村さんは語ります。
粘土や段ボールを使って遊んだり、イラストを描くなど、その日によって、子どもたちの「したい」ことは変わるため、一日一日が真剣勝負だと話す村上さん。
この夏、子どもたちが日々製作した作品を「みんないっしょの作品展」と題し、障がいの有無、老若男女の違いを超え展示・鑑賞する場を設けました。参加者からは、「他人からの評価を気にせず作った、のびのびとした作品」といった声がありました。
子どもたちに日々寄り添い、放課後を楽しく過ごし笑顔で子どもたちが帰宅することで、家族にも笑顔が広がっています。
▲作品展に展示した「大きな靴」
活動を継続するため
活動当初は3名だった利用者が、現在は学校に配架したパンフレットや保護者からの口コミもあり、16名登録し、利用しています。ただ、子どもたちが創作活動をするためには必要な教材、道具そして、そのサポートを行うスタッフがレベルアップする研修も必要です。
そのためには、今後必要となってくる資金のために、応援してくれる会員を増やし、寄付を募るとともに、放課後等デイサービスだけでなく、障がいがある子どもたち一人ひとりに合わせた専門的な教育支援(=療育)プログラムや、高校卒業後の就労支援も視野に入れて展開することも期待されています。
しかし、活動は始まったばかり。木村さんは「これからやっていきたいことはたくさんあるけれど、まずは地盤を固めて、この子が笑顔になるには、どうしたらいいだろう?という原点を忘れずに、ゆっくり進んでいきたいと思います」と語りました。
創作活動を通して子どもたちの可能性を広げ、市民にも芸術を鑑賞する際、障がいの有無は関係ないと発信する「ぞうさんの家」。これからの創作活動を通した取組みに目が離せません。
NPO法人ぞうさんの家
〒983-0803 仙台市宮城野区小田原3-4-25
●TEL/FAX:022-355-8065
●E-mail:zousannoie@outlook.com
●URL:http://zousannoie.jimdo.com/
月刊杜の伝言板ゆるる2016年10月号
http://www.yururu.com/?p=1839
NPO法人ぞうさんの家
小学・中学・高校生の子どもたちには、学校生活以外の放課後を過ごす場として、それぞれの家庭はもちろん、児童館や日々の習い事など、様々な居場所があります。そこでの経験や人との出会いを通して、日々成長していきます。
働く親にとって心配な放課後を託している放課後児童クラブ。登録している児童数は、現在、仙台市内で8,916人にのぼります。(厚生労働省平成27年度調査)
▲第4期仙台市障害福祉計画(平成27年〜29年度)より
一方、知的・情緒・発達障がいなどの障がいがある子どもたちは「放課後等デイサービス」を行う事業所(居場所)で過ごすことが多く、東日本大震災以降、少しずつ減少している仙台市全体児童数に対して、特別支援学級に在籍する児童数は増加傾向にあり、放課後の居場所がますます必要とされています。仙台市内には、今年の8月で95ヶ所の事業所ができています。
造型活動とともに
放課後等デイサービスは、平成24年4月に児童福祉法で定められました。障がいがある小学生・中学生・高校生を中心に、放課後や夏休みなどの長期休暇期間に利用する居場所です。
学校や家庭とは異なる場所で、様々な世代との交流、創作のほか、一人ひとりに合わせた支援を行っています。それぞれの事業所は、社会福祉法人やNPO法人、企業など多様な形態ですが、一人ひとりの子どもたちのためを考えて日々活動しています。
中には、放課後の時間を造型活動という分野に特化して、ものづくりや絵画あそびを通して、「豊かにゆっくりと過ごしてほしい」をテーマにした放課後等デイサービスを行っているNPO法人ぞうさんの家があります。
▲作品であふれる「ぞうさんの家」
表現に障がいは関係ない
ぞうさんの家が生まれたきっかけは、理事長である木村秀三さんが退職後に、教師をしていた当時から取り組んでいた陶芸を活かし、陶芸アトリエ「やきものぞうさん」を開設したことから始まりました。
障がいのある人もない人も一緒に親子で陶芸を楽しむ「ファミリーにこにこクラブ」を開設し、その活動を通して、木村さんは、「表現には障がいの有無は関係がない」ことを痛感しました。
そこで自分たちの強みである創作活動を活かし、学校で頑張ってきた子どもたちが、放課後ゆっくりとものづくりに触れる場所、また自然や生活を学ぶ場所をと、今年4月仙台市宮城野区小田原で、ぞうさんの家の活動を始めました。
職員には、木村さんをはじめ、障がいのある方々と接してきた経験を持つ村上としみさん、そして障がいのある子どもたちに絵画指導や表現の場をつくっている「ぼーだれすアートくらぶBACせんだい」のメンバーも支援員として加わり、子どもたちの日々の活動をサポートしています。
子どもたちの「したい」を引き出す
ぞうさんの家が子どもたちに行うサポートで大切にしていることは、「子どもの楽しい空間をつくること」です。創作活動を日々プログラム化し、子どもたちに強制して何かを製作させるのではなく、子どもたちから思い思いに「したい」と思うことを聞き取り、その活動をしています。
「子どもたちは、学校で十分勉強し、集団での活動をしてきたはず。時には注意されることもあるでしょう。そのうえ放課後まで大人から『これをしなさい』と言われ続けたら、疲れてしまう。そんな場所に来たいと思わないのではと感じて。この場所では、表現活動を通して子どもたち一人ひとりの「したい」と思う気持ちを形にし、その気持ちを認めることで少しずつ自己肯定感を高めていきたい」と木村さんは語ります。
粘土や段ボールを使って遊んだり、イラストを描くなど、その日によって、子どもたちの「したい」ことは変わるため、一日一日が真剣勝負だと話す村上さん。
この夏、子どもたちが日々製作した作品を「みんないっしょの作品展」と題し、障がいの有無、老若男女の違いを超え展示・鑑賞する場を設けました。参加者からは、「他人からの評価を気にせず作った、のびのびとした作品」といった声がありました。
子どもたちに日々寄り添い、放課後を楽しく過ごし笑顔で子どもたちが帰宅することで、家族にも笑顔が広がっています。
▲作品展に展示した「大きな靴」
活動を継続するため
活動当初は3名だった利用者が、現在は学校に配架したパンフレットや保護者からの口コミもあり、16名登録し、利用しています。ただ、子どもたちが創作活動をするためには必要な教材、道具そして、そのサポートを行うスタッフがレベルアップする研修も必要です。
そのためには、今後必要となってくる資金のために、応援してくれる会員を増やし、寄付を募るとともに、放課後等デイサービスだけでなく、障がいがある子どもたち一人ひとりに合わせた専門的な教育支援(=療育)プログラムや、高校卒業後の就労支援も視野に入れて展開することも期待されています。
しかし、活動は始まったばかり。木村さんは「これからやっていきたいことはたくさんあるけれど、まずは地盤を固めて、この子が笑顔になるには、どうしたらいいだろう?という原点を忘れずに、ゆっくり進んでいきたいと思います」と語りました。
創作活動を通して子どもたちの可能性を広げ、市民にも芸術を鑑賞する際、障がいの有無は関係ないと発信する「ぞうさんの家」。これからの創作活動を通した取組みに目が離せません。
NPO法人ぞうさんの家
〒983-0803 仙台市宮城野区小田原3-4-25
●TEL/FAX:022-355-8065
●E-mail:zousannoie@outlook.com
●URL:http://zousannoie.jimdo.com/
月刊杜の伝言板ゆるる2016年10月号
http://www.yururu.com/?p=1839