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お肉とペットはどう違う? 動物と倫理学「第1回 子イヌ、子ネコ、子ウシ、子パンダ。仲間外れは?」

東北大学

2016/10/24 21:34

第1回 子イヌ、子ネコ、子ウシ、子パンダ。仲間外れは?

私たちの多くはお肉が大好きです。焼肉、ハンバーグ、トンカツ、鶏の唐揚げ――考えただけでよだれが出てくる、という人もいるでしょう。

他方で、肉好きよりは数が少ないでしょうが、私たちの多くは動物も大好きです。イヌやネコ、ウサギやフェレットなどなど。もっと珍しい動物が好きだし、飼っている、という人もいるでしょう。動物番組を見たり、動物園に行ったりするのが好きな人もたくさんいると思います。

さて、みなさんは、自分がお肉も好きだし動物も好きだというのを、おかしいと感じたことはないでしょうか。世間一般の風潮としても、イヌやネコはかわいがり、大事に扱うべきだけど、ウシやブタは殺して食べてしまってもよいとされています。
一方の動物では許されないことが、なぜ他方の動物では許されるのでしょう?

たしかに、イヌやネコはかわいいです。でも、「かわいいから」という理由で「大事にしないといけない」のだとしたら、たんなるえこひいきです(ウシやブタもかわいいと私は思いますが、それはいまはおいておきます)。人間相手のえこひいきはよくないのに、動物相手のえこひいきはしてもよいのだとしたら、それはなぜなのでしょう?

こういう問いかけには、いろいろな反応がありえます。ペットはペット、家畜は家畜なのだから、別扱いで当然だ、それが家畜の運命なのだ、とか、肉を食べないと生きていけないのだからしょうがない、とか。美味しいんだから難しいことは考えないほうがいい、と言う人もいるでしょうし、動物(家畜)にとって何がよいことで何が悪いことかを人間が決められると考えるなんて、それこそ傲慢きわまる、と言う人もいるでしょう。

たいていの人はこうした答えで済ませてしまいます。それどころか、そもそもこういう答えを思いついている時点で、他の人よりはだんぜん動物のことを気にしているのかもしれません。私たちは、動物をどう扱うべきかということについて、普段はほぼまったく考えていないからです。

私は以前、トンカツ屋さんの看板で、ブタがナイフとフォークをもって舌なめずりしているものを見たことがあります。これって、共食いですよね? こういうグロテスクな看板や広告は、実はけっこうたくさんあります(「共食いキャラ」で画像検索してみてください)。そして、そのグロテスクさに私たちの多くが気が付いていないということは、私たちが動物の扱いについて普段はほとんど考えていないことをはっきり示しています。

でも、ここまで読んでくださった方は、普通の人よりも動物のことを気にしているし、さっき挙げたような答えでは満足できないのだと思います。ほんとうにさっきみたいな答えでよいのでしょうか。私たちの動物への態度は、いったいどうやったら、正しいこと、あるいは間違っていないことだと言えるのでしょうか。というか、そもそもそんなふうに言えるのでしょうか?――こういうことをじっくり考えるのが、次回からお話しする「動物倫理」です。

■参考文献とコメント:
マンガで学ぶ動物倫理:わたしたちは動物とどうつきあえばよいのか
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この連載で紹介した以外にも、動物倫理では数多くのことが問題になります。この本は、動物倫理ではどんなことが、どんなふうに問題になっているのかを、マンガと簡潔な解説とでかなり包括的に紹介してくれています。最後についているブックガイドや映画ガイドも充実。

動物を守りたい君へ
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新しい分野のことを知りたいとき、私はよく中高生向けの新書を読みます。名著がたくさんあるからです。これもそのひとつで、動物を道徳的に扱うということがもつ複雑さを、複雑なままに、しかしとても分かりやすく説明してくれています。

動物の権利
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残念ながら絶版ですが、図書館や古本屋、古書サイトなどで探してみてください。動物倫理を理論的にきちんと展開したもののなかではいちばん読みやすく、かつコンパクトにまとまっています。

【プロフィール】
村山達也、東北大学准教授(倫理学)。専門はフランス哲学、倫理学。若い頃は「三〇才以上のやつは信じるな」という言葉に共感していましたが、自分が三〇才を過ぎたら自分が信じられなくなってしまいました。最近はゆらゆら帝国と坂本慎太郎のアルバムをよく聴いています。