日本に寄り添いボランティアの文化を!~NPO法人仙台敬老奉仕会の取り組み~
その他
2016/11/16 10:24
日本に寄り添いボランティアの文化を!~NPO法人仙台敬老奉仕会の取り組み~
2006年に活動がスタートした仙台敬老奉仕会は、当時、宮城県成人病予防協会会長だった吉永馨会長が、加速する日本の高齢化社会にむけて、もっと欧米のように、介護施設などで、市民ボランティアの力が求められていくことを予想し、同じ想いを持つ仲間と隔月で研修会を始めました。研修会の参加者から、徐々に賛同者が増え、2008年にNPO法人化しました。
「寄り添いボランティア」の誕生
当時、介護施設のボランティア活動というと、歌や踊りなどを披露する慰問型か、施設内の清掃や洗濯物のたたみ方など、職員のお手伝いが主でした。資格のないボランティアが利用者と触れ合うことは、プライバシー保護の問題や怪我、感染などの心配があり、介護施設側では受け入れを躊躇していました。
「現在、日本で介護を必要とする高齢者は約600万人と言われています。全国で特別養護老人ホームのベッド数は約60万床。どこも常に満床で入所待ちは約52万人と言われています。どこの施設も人手不足で、職員の負担も大きく、労働環境は決して良いとは言えません。食事・排泄・入浴介助が優先され、なかなか利用者の心に向き合う時間が取れないこともあり、利用者は孤独感を募らせてしまうこともあります」と吉永会長は話します。そこで、利用者の心のケアを、施設だけでなく家族だけでなく、地域のボランティアが支えていく必要があると始まったのが、仙台敬老奉仕会の「寄り添いボランティア」です。
仙台敬老奉仕会の「寄り添い」の特徴は、利用者との心のふれあいを重視した話し相手になることです。その時々の利用者の気分にあわせて、一緒に歌を歌ったり、ゲームをしたり、散歩をすることもあります。ボランティアの心得のひとつとして、「何かをすること(Doing)」よりも「そばにいること(Being)」を大切にしています。ずっとそばにいると、たとえ、その利用者が言葉を忘れてしまっていても、通い合うものが出てくるからです。
▲Doingより Beingで
認知症の特徴として、何度も同じ話をする傾向がありますが、懸命に耳を傾けていると、同じ話のなかにも、毎回すこし変化を感じることがあるとのこと。その変化に、利用者の心の状態が隠されていることもあります。
「認知症になっても感情は生きています。十人十色どころか、十人百色といってもいい。同じ人でもその日その日で表情も対応も違います。今日はこんな話をしよう、こんなゲームをしようと準備をしても役に立たないこともありますが、その日その人の状態に寄り添うことを大切にしています」とボランティアメンバーの皆さんは話します。
黄色いエプロンが目印
ボランティアメンバーのユニフォームは、黄色いエプロン。同じ曜日同じ時間に同じ人が寄り添ってくれるという「環境を変えないこと」が、認知症の方の心を安定させるために効果的です。誰ということは覚えていなくても、黄色いエプロンの人は、話し相手
になってくれるということは記憶に残ります。
発足して3年目に、ひとつの特別養護老人ホームから手が上がり、現在では、13の特別養護老人ホームなどで、約50名のボランティアが活躍しています。
ボランティアメンバーの年齢層は、40代から80代と幅広く、退職後に活動を始められた方が主ですが、発足当時から関わっている方、隔月で開催されている研修会に参加したことやラジオで吉永会長の言葉に感銘を受けたことをきっかけに活動を始めた方、現役で仕事を続けながら週末に活動している方、家族の介護をしながら活動している方などバックグラウンドは様々です。週に1回から2回活動している方が多く、なかには、週に8か所で活動している方もいます。
長い方で8年も継続して活動しています。活動を続けられているのは、帰り際に告げられた一言「また来週来てね、待ってるよ」という言葉に凝縮されていると、現役で仕事を続けながら週末に活動しているメンバーのひとりは話します。「面白い話をして」と言われて、「上手く話そうと頑張ってうまくいかないこともあった。そんな時は、ボランティア仲間に相談し、共感してもらえたことで続けられています。多忙な仕事の中で忘れていたパーツを、ボランティアを通して埋めに行っているような気がします」
▲優しく話しかけるボランティアメンバー
活動先との関係を大切に
活動先で働くスタッフとの関係性を築いていくことも活動を継続していくためにとても重要です。
「施設スタッフの方々のご苦労を間近で見て、いかに大変な仕事かよくわかります。私たちが活動を続けていけるのは、施設スタッフの努力があってこそ」とメンバーのひとりは語ります。施設スタッフと利用者との関係を尊重し、各施設のボランティア担当者と密に情報共有しながら活動を続けていくなかで、「利用者の生活を豊かにしてくれる存在であり、利用者にとって、社会との接点となっている」と施設側からの信頼も高まっています。
現在は、他の介護施設からもボランティア派遣の依頼がありますが、ボランティアの人数に限りがあり、現状では、活動先を増やすことが出来ないでいます。「もっとボランティアをしてくれる人を増やしたい。現在、活動している施設でも、もっと人数がいれば、ひとりでも多くの利用者に寄り添うことができる」と、理事の岡本仁子さんは語ります。
仙台敬老奉仕会では、隔月の研修会のほか、実際、現場で活動するまでに、丁寧なオリエンテーションの時間を作っており、現場でも慣れるまでは、先輩のボランティアメンバーが新しいメンバーをサポートし、育成していく仕組みができています。ボランティアも随時、募集中です。
今年、仙台敬老奉仕会では創立10周年を迎え、着実に、「寄り添いボランティア」の文化を広げています。特別養護老人ホームは、利用者にとって人生最後の場所となることも多く、毎回会える時間を大切に、利用者の方がこれまでの人生を「生きていてよかった」「楽しい人生だった」と思えるように、心に寄り添い続けていきます。「また来てね、待ってるよ」の声に支えられて、これからも、「寄り添いボランティア」の文化を仙台から発信していきます。
NPO法人仙台敬老奉仕会
〒980-0801 仙台市青葉区木町通2丁目5-18
大熊ビル3階
●TEL&FAX:022-725-7284
●E-mail:sendaikeirou@yahoo.co.jp
●URL:http://sendaikeirou.web.fc2.com
月刊杜の伝言板ゆるる11月号
http://www.yururu.com/?p=1896
2006年に活動がスタートした仙台敬老奉仕会は、当時、宮城県成人病予防協会会長だった吉永馨会長が、加速する日本の高齢化社会にむけて、もっと欧米のように、介護施設などで、市民ボランティアの力が求められていくことを予想し、同じ想いを持つ仲間と隔月で研修会を始めました。研修会の参加者から、徐々に賛同者が増え、2008年にNPO法人化しました。
「寄り添いボランティア」の誕生
当時、介護施設のボランティア活動というと、歌や踊りなどを披露する慰問型か、施設内の清掃や洗濯物のたたみ方など、職員のお手伝いが主でした。資格のないボランティアが利用者と触れ合うことは、プライバシー保護の問題や怪我、感染などの心配があり、介護施設側では受け入れを躊躇していました。
「現在、日本で介護を必要とする高齢者は約600万人と言われています。全国で特別養護老人ホームのベッド数は約60万床。どこも常に満床で入所待ちは約52万人と言われています。どこの施設も人手不足で、職員の負担も大きく、労働環境は決して良いとは言えません。食事・排泄・入浴介助が優先され、なかなか利用者の心に向き合う時間が取れないこともあり、利用者は孤独感を募らせてしまうこともあります」と吉永会長は話します。そこで、利用者の心のケアを、施設だけでなく家族だけでなく、地域のボランティアが支えていく必要があると始まったのが、仙台敬老奉仕会の「寄り添いボランティア」です。
仙台敬老奉仕会の「寄り添い」の特徴は、利用者との心のふれあいを重視した話し相手になることです。その時々の利用者の気分にあわせて、一緒に歌を歌ったり、ゲームをしたり、散歩をすることもあります。ボランティアの心得のひとつとして、「何かをすること(Doing)」よりも「そばにいること(Being)」を大切にしています。ずっとそばにいると、たとえ、その利用者が言葉を忘れてしまっていても、通い合うものが出てくるからです。
▲Doingより Beingで
認知症の特徴として、何度も同じ話をする傾向がありますが、懸命に耳を傾けていると、同じ話のなかにも、毎回すこし変化を感じることがあるとのこと。その変化に、利用者の心の状態が隠されていることもあります。
「認知症になっても感情は生きています。十人十色どころか、十人百色といってもいい。同じ人でもその日その日で表情も対応も違います。今日はこんな話をしよう、こんなゲームをしようと準備をしても役に立たないこともありますが、その日その人の状態に寄り添うことを大切にしています」とボランティアメンバーの皆さんは話します。
黄色いエプロンが目印
ボランティアメンバーのユニフォームは、黄色いエプロン。同じ曜日同じ時間に同じ人が寄り添ってくれるという「環境を変えないこと」が、認知症の方の心を安定させるために効果的です。誰ということは覚えていなくても、黄色いエプロンの人は、話し相手
になってくれるということは記憶に残ります。
発足して3年目に、ひとつの特別養護老人ホームから手が上がり、現在では、13の特別養護老人ホームなどで、約50名のボランティアが活躍しています。
ボランティアメンバーの年齢層は、40代から80代と幅広く、退職後に活動を始められた方が主ですが、発足当時から関わっている方、隔月で開催されている研修会に参加したことやラジオで吉永会長の言葉に感銘を受けたことをきっかけに活動を始めた方、現役で仕事を続けながら週末に活動している方、家族の介護をしながら活動している方などバックグラウンドは様々です。週に1回から2回活動している方が多く、なかには、週に8か所で活動している方もいます。
長い方で8年も継続して活動しています。活動を続けられているのは、帰り際に告げられた一言「また来週来てね、待ってるよ」という言葉に凝縮されていると、現役で仕事を続けながら週末に活動しているメンバーのひとりは話します。「面白い話をして」と言われて、「上手く話そうと頑張ってうまくいかないこともあった。そんな時は、ボランティア仲間に相談し、共感してもらえたことで続けられています。多忙な仕事の中で忘れていたパーツを、ボランティアを通して埋めに行っているような気がします」
▲優しく話しかけるボランティアメンバー
活動先との関係を大切に
活動先で働くスタッフとの関係性を築いていくことも活動を継続していくためにとても重要です。
「施設スタッフの方々のご苦労を間近で見て、いかに大変な仕事かよくわかります。私たちが活動を続けていけるのは、施設スタッフの努力があってこそ」とメンバーのひとりは語ります。施設スタッフと利用者との関係を尊重し、各施設のボランティア担当者と密に情報共有しながら活動を続けていくなかで、「利用者の生活を豊かにしてくれる存在であり、利用者にとって、社会との接点となっている」と施設側からの信頼も高まっています。
現在は、他の介護施設からもボランティア派遣の依頼がありますが、ボランティアの人数に限りがあり、現状では、活動先を増やすことが出来ないでいます。「もっとボランティアをしてくれる人を増やしたい。現在、活動している施設でも、もっと人数がいれば、ひとりでも多くの利用者に寄り添うことができる」と、理事の岡本仁子さんは語ります。
仙台敬老奉仕会では、隔月の研修会のほか、実際、現場で活動するまでに、丁寧なオリエンテーションの時間を作っており、現場でも慣れるまでは、先輩のボランティアメンバーが新しいメンバーをサポートし、育成していく仕組みができています。ボランティアも随時、募集中です。
今年、仙台敬老奉仕会では創立10周年を迎え、着実に、「寄り添いボランティア」の文化を広げています。特別養護老人ホームは、利用者にとって人生最後の場所となることも多く、毎回会える時間を大切に、利用者の方がこれまでの人生を「生きていてよかった」「楽しい人生だった」と思えるように、心に寄り添い続けていきます。「また来てね、待ってるよ」の声に支えられて、これからも、「寄り添いボランティア」の文化を仙台から発信していきます。
NPO法人仙台敬老奉仕会
〒980-0801 仙台市青葉区木町通2丁目5-18
大熊ビル3階
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月刊杜の伝言板ゆるる11月号
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