- 「東日本大震災後6年目を迎えて」第1回 震災6年目の被災地の暮らしと健康の状況
- 東日本大震災後6年目を迎えて「第2回 震災はどのように暮らしと健康に影響したか」
- 東日本大震災後6年目を迎えて「第4回 震災の教訓は根付いているか」
「東日本大震災後6年目を迎えて」第3回 震災の子供たちへの影響
東北大学
2017/03/08 18:15
東日本大震災後6年目を迎えて
東北大学 経済学研究科・災害科学国際研究所 教授 吉田 浩
第3回 震災の子供たちへの影響
第1回、第2回地域別に暮らしの様子や転居、健康に関するアンケート調査の結果を見てきました。つづく、第3回では焦点を子どもたちに変えて、東日本大震災が子供たちに及ぼした影響についてみることとします。
1.こころ・精神的な健康・成長面
最初に、子どもたちの「こころ・精神的な健康・成長面」についての回答結果をみることとします。以下では、「良好である」「ある程度良好である」を「良好」としてとりまとめ、「やや問題がある」「非常に問題がある」を「問題」として取りまとめています。
表1を見ると、被災地より東京の方で、良好と答えた人の比率が低いことがわかります。被災地の中では、宮城県子供のこころ・成長面で「良好」とする回答が小さくなっています。同時に「問題」とする回答についてみてみると、宮城県が14.51%で被災地内では最も高くなっており、ケアを必要とする子供たちが多いことがわかります。
2.子どもを見守る大人の状況
子どもの状況を考えるうえで、地域の児童福祉や行政も重要ですが、それを見守り育てる大人の状況も重要な要素となります。ここでは。「子どもを見守る周囲の大人の状況」に関して、良好か問題かを尋ねました。
表2を見ると、表1はやや異なった結果が得られていることがわかります。被災地では宮城県が「良好」とする比率が最も低いのですが、その低さは東京よりも低く、今回の調査地域全体をと通じて最も低くなっていることです。
また、「問題」とする比率も、宮城県が15.9%と東京よりも高く、6人に1人の子どもを見守る立場にある大人が問題に直面していることがわかりました。宮城県の大人、子どもともにばらつきが縮小され、岩手県のように良好が多く、問題も小さいとなるように改善していくことが望ましいと言えます。
3.子どもの通学の状況(不登校など)
引き続き、子どもの状況に関して詳しく見ていくことにしましょう。次は、子どもの通学の状況(不登校など)などについて、良好、問題を尋ねた結果を見ます。
表3を見ると、宮城県で良好とする回答は東京都よりもやや高くなっていますが、問題とする比率も10%余りで、10人に1人の子どもが通学上の問題に直面して入りことがわかります。これに対して、福島県は、被災地の中では問題とする回答もっとも高くなっていることが目につきます。
4.子どもの教育・成績・保育の状況
最後に、子どもの教育・成績・保育といった学力に近い状況を尋ねた結果を見ることとします。
表4を見ると、宮城県は被災地の中では「良好」とする回答の比率が85.4%と最も高く、東京都よりも高くなっています。同時に、「問題」とする回答の比率も、最も低く、平均的に良好な割合が多いことを示しています。これに対して。福島県では「良好」の割合は80%にとどまり、また「問題」とする回答が20%と5人に1名が学力に関連の近い状況で問題に直面していることがわかりました。
5.まとめ
今回は、東日本大震災が子どもの健康や発達、学力関連の事項に及ぼした影響に焦点をあてて、アンケート結果をみました。この結果を見ると、宮城県は子どもの学力に関しては、東京都よりも良好な傾向が強いことがわかりました、逆に子どもの心の健康は状況があまりよくなく、特に子どもを見守る周囲の大人の状況に関しては、かなり問題に直面している人が多いことがわかりました。
震災から6年を過ぎ、15歳までの子どものうちおよそ半数が震災後に生まれた世代ということになりますが、震災の影響が子どもたちに及ばないようにそれを見守る周囲の大人たちの状況も含めて、復興が進むような環境作りが必要といえるでしょう。
※ここでは、現在15歳以下のお子さんのいる世帯の方に、(回答者=親の目)から見た「現在のお子さんの状況に関して、それぞれの各項目についてあてはまるものをお選びください。」(お子さんが2人以上おいでの場合は最も年長のお子さんについてお答えください。 )としたアンケートの結果に基づいています。
次回は「第4回 震災の教訓は根付いているか」です。
配信日程:3月9日(木) 配信予定
【プロフィール】
吉田 浩
東北大学大学院経済学研究科教授
高齢経済社会研究センター長
少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。
1969年、東京生まれ、1女2男の父。
【アーカイブ】
第1回 震災6年目の被災地の暮らしと健康の状況
第2回 震災はどのように暮らしと健康に影響したか
東北大学 経済学研究科・災害科学国際研究所 教授 吉田 浩
第3回 震災の子供たちへの影響
第1回、第2回地域別に暮らしの様子や転居、健康に関するアンケート調査の結果を見てきました。つづく、第3回では焦点を子どもたちに変えて、東日本大震災が子供たちに及ぼした影響についてみることとします。
1.こころ・精神的な健康・成長面
最初に、子どもたちの「こころ・精神的な健康・成長面」についての回答結果をみることとします。以下では、「良好である」「ある程度良好である」を「良好」としてとりまとめ、「やや問題がある」「非常に問題がある」を「問題」として取りまとめています。
表1を見ると、被災地より東京の方で、良好と答えた人の比率が低いことがわかります。被災地の中では、宮城県子供のこころ・成長面で「良好」とする回答が小さくなっています。同時に「問題」とする回答についてみてみると、宮城県が14.51%で被災地内では最も高くなっており、ケアを必要とする子供たちが多いことがわかります。
2.子どもを見守る大人の状況
子どもの状況を考えるうえで、地域の児童福祉や行政も重要ですが、それを見守り育てる大人の状況も重要な要素となります。ここでは。「子どもを見守る周囲の大人の状況」に関して、良好か問題かを尋ねました。
表2を見ると、表1はやや異なった結果が得られていることがわかります。被災地では宮城県が「良好」とする比率が最も低いのですが、その低さは東京よりも低く、今回の調査地域全体をと通じて最も低くなっていることです。
また、「問題」とする比率も、宮城県が15.9%と東京よりも高く、6人に1人の子どもを見守る立場にある大人が問題に直面していることがわかりました。宮城県の大人、子どもともにばらつきが縮小され、岩手県のように良好が多く、問題も小さいとなるように改善していくことが望ましいと言えます。
3.子どもの通学の状況(不登校など)
引き続き、子どもの状況に関して詳しく見ていくことにしましょう。次は、子どもの通学の状況(不登校など)などについて、良好、問題を尋ねた結果を見ます。
表3を見ると、宮城県で良好とする回答は東京都よりもやや高くなっていますが、問題とする比率も10%余りで、10人に1人の子どもが通学上の問題に直面して入りことがわかります。これに対して、福島県は、被災地の中では問題とする回答もっとも高くなっていることが目につきます。
4.子どもの教育・成績・保育の状況
最後に、子どもの教育・成績・保育といった学力に近い状況を尋ねた結果を見ることとします。
表4を見ると、宮城県は被災地の中では「良好」とする回答の比率が85.4%と最も高く、東京都よりも高くなっています。同時に、「問題」とする回答の比率も、最も低く、平均的に良好な割合が多いことを示しています。これに対して。福島県では「良好」の割合は80%にとどまり、また「問題」とする回答が20%と5人に1名が学力に関連の近い状況で問題に直面していることがわかりました。
5.まとめ
今回は、東日本大震災が子どもの健康や発達、学力関連の事項に及ぼした影響に焦点をあてて、アンケート結果をみました。この結果を見ると、宮城県は子どもの学力に関しては、東京都よりも良好な傾向が強いことがわかりました、逆に子どもの心の健康は状況があまりよくなく、特に子どもを見守る周囲の大人の状況に関しては、かなり問題に直面している人が多いことがわかりました。
震災から6年を過ぎ、15歳までの子どものうちおよそ半数が震災後に生まれた世代ということになりますが、震災の影響が子どもたちに及ばないようにそれを見守る周囲の大人たちの状況も含めて、復興が進むような環境作りが必要といえるでしょう。
※ここでは、現在15歳以下のお子さんのいる世帯の方に、(回答者=親の目)から見た「現在のお子さんの状況に関して、それぞれの各項目についてあてはまるものをお選びください。」(お子さんが2人以上おいでの場合は最も年長のお子さんについてお答えください。 )としたアンケートの結果に基づいています。
次回は「第4回 震災の教訓は根付いているか」です。
配信日程:3月9日(木) 配信予定
【プロフィール】
吉田 浩
東北大学大学院経済学研究科教授
高齢経済社会研究センター長
少子・高齢化社会の問題を経済学的観点から統計などを用いて解明。世代間不均衡、男女共同参画社会、公共政策の決定過程、玩具福祉学などを研究。
1969年、東京生まれ、1女2男の父。
【アーカイブ】
第1回 震災6年目の被災地の暮らしと健康の状況
第2回 震災はどのように暮らしと健康に影響したか