戻る

仙台放送NEWS

検索


特殊詐欺を統計的に考える 後編

東北大学

2016/06/03 09:50

特殊詐欺を統計的に考える 後編

いただいたデータを見ると、平成27年には既遂と未遂を合わせて348件の特殊詐欺が起きています。年齢別にみると、10歳代から50歳代まで合わせて55件(15.8%)であるのに対し、60歳代が73件(21%)、70歳代が127件(36.5%)、80歳代以上が93件(26.7%)となっています。やはり高齢者の方が狙われていることが分かります。

男女別にみると、男性が100件(28.7%)、女性が248件(71.3%)と、女性が圧倒的に被害に遭っています。ただこれは男性と女性の違いというよりも、女性の方が(たとえば専業主婦の方々が)家にいる時間が長いので、特殊詐欺の電話を受ける確率が高いと考えることもできます。

次に、どのような種類の特殊詐欺があり、それが男女間で、また年齢層間で違いがあるのか見てみましょう。

男女間の違いを見たのが下の表です。全体を見ると、オレオレ詐欺(151件、43.4%)、架空請求詐欺(85件、24.4%)、還付金詐欺(74件、21.3%)が多いことが分かります。

しかし男女別にみると性別による違いが見えてきます。

女性ではオレオレ詐欺が男性より圧倒的に多いのに(50.4%)、男性ではギャンブル情報詐欺(5%)と架空請求詐欺(33.0%)、融資詐欺(10.0%)が女性より多くなっています。

このことが確かに言えるならば、女性に対してはオレオレ詐欺に気を付けるような広報活動を行い、男性にはギャンブルや架空請求、融資といった話には注意するように広報活動を行うことが有効になるでしょう。



年齢層別の違いを見たのが、下の表です。50歳代以下だと架空請求詐欺が他の年齢層より圧倒的に多いことが分かります(69.1%)。

これに対して、オレオレ詐欺は年齢層が高くなるほど割合が高くなり、還付金詐欺は60歳代と70歳代で割合が高いことが分かります。このことから年齢層別の広報活動が重要であると考えられます。



本コラムでは、特殊詐欺を性別と年齢層別という視点から検討しました。そうすることで、どのような人々を対象にどのような広報活動をすればよいのかが見えてきたと思います。

ただ件数が348件と少ないので、同じ年齢層の男性と女性の違いを見ることは統計学的には難しいです。また人々が住んでいる地域の特性の影響についてもまだ分析ができていません。

たとえば人間関係が良好な地域では、特殊詐欺の電話を受けた人が近隣の人に相談することで詐欺に遭わなくてすむかもしれません。本当にそうならば、そういう地域では未遂の割合が高くなるでしょう。

今後は、平成27年のデータに他の年のデータも追加して分析のための件数を増やし、地域特性もデータに加えて、より詳細な分析をしたいと思っています。

【プロフィール】
佐藤 嘉倫
東北大学大学院文学研究科教授
合理的選択理論の視点から、信頼や社会的不平等の解明に取り組んでいる。
編著に『ソーシャル・キャピタルと格差社会』(東京大学出版会、2014年)がある。
趣味 ジャズ鑑賞、ギター、料理、スキー