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【これからどうなる?!最先端の教育事情】第1回 10年に一度の大きな変革

2016/03/28 10:08

第1回 10年に一度の大きな変革

■新しい教育に向けての動きが本格化
これからの日本を築いていく今の子供たちに,どんな大人になって,どんな生き方を期待していますか?日本の小・中・高等学校等,それぞれの教科等の目標や大まかな教育内容は,学習指導要領というもので定められています。

これは約10年に一度改訂されるのですが,次はまさに2016年度中に改訂され,2020年には小学校から順次実施される見込みです。つまり今の2歳児からは新しい教育課程になります。

シリーズ 最先端の教育事情 第1回目の今回は,学習指導要領の改訂に向けて,小学校から高校までの子供たちにどのような力を育成していくのか,現在交わされている議論の一部を易しくご紹介します。今後の教育の方向性は,ご家庭での子育ての参考にもなるはずです。


ノートパソコンだけでなくタブレット端末も利用して,プログラミングの学習をする生徒たち

■変わる教員の役割:何を教えるかから どのように学ぶか へ
学習指導要領の改訂では,小学校・中学校・高校の全ての学校を対象にして「何をどのように学ぶか」について議論が行われています。

では,子供たちが将来どんな資質・能力を身につけていることが期待されているのでしょうか。そこには大きな3つの柱があると言われています。

1つ目は,何を知っているのか・何ができるのか,という柱,

2つ目は知っていること。知っていること・できることをどう使うかという柱,

3つ目は,これからの社会・世界とどのように関わり,よりよい人生送るかという柱です。

つまり,単に知っている・できるだけに留まらず,知っていることを結びつけて新しいものを生み出すことや,新たな課題を自ら見付けて,それを解決しながら社会の中で生き抜くことが求められていると言えましょう。


教育課程企画特別部会,論点整理 補足資料より作成
資料PDFを見る(p.27)

■どんな学びが大切になってくるか

こうした資質・能力は,どのような学びによって得られるのでしょうか。それには3つの学びの過程があると言われています。

まず,与えられた問題を解くだけではなく,何が問題であるかを自ら問いを立てて見付け,自分にとってどのような情報・知識が必要なのかを理解し,見通しを持って取り組むという「主体的な学びの過程」が必要です。

そうすると,例えば,答えが予め定まっていない社会的な問題など,条件によって答えが変わることに対しても,知っていること・できることを主体的に活用して,どんな時に最善の結果が得られるのか探究する,といった「深い学びの過程」が必要になります。

さらに,その過程では,人の力だけでは困難で時間が掛かるような調査やシミュレーションも必要になってくるかもしれません。その時には,コンピュータも使うことも求められるでしょう。

こうした深い学びを支えるのが「対話的な学びの過程」です。対話をするためには,自分で考えていることを整理し,言葉や図などで表現しながら,他者からの意見や新たな視点を相互に得すことで,さらに自分の考えを発展させることができます。


教育課程企画特別部会,論点整理 補足資料より作成
資料PDFを見る(p.26)

学習指導要領が改訂されると,小学校からこうした力を段階的に育成するための活動が取り入れられてきます。授業の風景も,教員が一方的に話してばかりというものから変化してくることでしょう。

ご家庭でも,今後訪れる,こうした新たな学びの視点を先取りしてみてはいかがでしょうか。例えば,子供が興味を持ったニュースなどに,「どうしてこのようなことが起きたんだろうね?」と聞くことで,問題を見つける・捉える練習になりますし,子供が話したことについて,「それってどういうこと?」と聞くことが,考えを深める練習になるでしょう。

また,何かを聞かれた時に直ぐに答えを伝えてしまわず,調べ方や考え方を教えるようにすることで,学び方を学ぶことができます。

次の学習指導要領が実施される2020年と言えば,オリンピックの年でもあります。新しい学びによって多くの子供たちが,世界中で活躍できるためにも,今後の教育の動向からも目が離せません。次回のコラムは,宮城県が提案する新たな授業のあり方についてご紹介します。

次回は「第2回 全国に先駆けて推進する宮城県のICT活用授業」です。
配信日程:3月29日(火) 予定

【プロフィール】
安藤 明伸
宮城教育大学 技術教育講座 准教授
1973年札幌市生まれ。北海道教育大学大学院修了。京都工芸繊維大学 博士課程修了。博士(学術)。
札幌市内の市立中学校 技術科教諭を経て,現在宮城教育大学 技術教育講座(准教授)。
現場に立脚し,教育工学的な立場から,技術科教育と情報教育を専門。
特に情報・ICTを用いた授業改善や,モバイルデバイスを活用した指導法開発,教材開発に従事。
ここ最近では,スマートフォンのセンサー機能を用いて,生徒自身がのこぎり引きの動きを独学できる教材や情報モラル教材の開発で,学術団体より表彰。
中学校「技術・家庭 技術分野」の教科書の情報分野の執筆。
その他役職
日本デジタル教科書学会理事,モバイル学会理事,文部科学省中央教育審議会専門員(初等中等教育分科会)情報教育に関するワーキンググループ委員,仙台市情報モラル教育推進会議アドバイザー。