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「みんなに知ってほしい!がんの痛みの克服法」 第1回 がん性疼痛と歯痛の違い

宮城大学

2016/08/09 11:05

第1回 がん性疼痛と歯痛の違い

30年程前にがん(悪性新生物)が日本人の死因第1位になり、その後がんで亡くなる人、がんに罹る人は増え続けています。今や、家族や親せきの中にがん経験者がいることは珍しくない状況です。



がん治療は日進月歩で、手術での治療以外にも、抗がん剤や放射線治療などの新しい治療方法が開発されてきています。

自分で行うがん対策は、定期にがん検診を受けて、早期発見でがんが小さいうちに治療することです。検診による早期発見、早期治療による効果も高まってきています。

しかし、まだいくつかの課題を抱え、さらなるがん克服の取組みは続けられています。



今回は、3回シリーズで、がんの課題の中から痛み(がん性疼痛)についてとりあげます。

1回目はがん性疼痛の特徴について説明致します、2回目は、がん性疼痛によってどんな影響があるのか説明致します。3回目は、がん性疼痛の克服法について、説明致します。

では、がん性疼痛の特徴から始めます。さまざまな研究結果のまとめから、がん患者の53%に痛みが生じると言われています 1)。

その痛みは大きく分けて3種類があります。

1つは、がん細胞が骨に転移して進行していく時などに感じるズキズキしたはっきりと強い痛みです。

2つめは、がん細胞が神経を刺激することで感じるビリッと電気が走るような、ピリピリと足がしびれた時のような痛みです。

3つめは、お腹の中でがん腫瘍が大きくなり、粘膜を押し広げることで感じる重苦しいようなズーンとした痛みです。3つめの痛みは、はっきりした痛みと感じず、弱い痛みから徐々に増していくと、ちょっとした苦しさやだるさ、気分がさえないという感覚を持ちます。それで、痛みであることを本人も気づかないうちにつらさが増していくこともあります。

がん性疼痛は、転んで膝を打った時のような一時的な痛みとは違います。

また、虫歯の炎症の強い痛みとも違います。虫歯の炎症の痛みは、最強ですが、抜歯や歯科治療で炎症が静まると3日程度で概ね痛みが消失します。

がん性疼痛は、一時的な刺激や急な炎症と異なり、すぐに痛みの原因が取り除けないことがほとんどのため、24時間、数日、数ヶ月にわたって痛みが持続するのが特徴です。

そして、がん性疼痛が出現する時期は、病状が進行して末期になってからとは限らないようです。

がん治療中に痛みがある人は59%、進行がん・転移や終末期の人で64%という調査結果があります 2)。

持続する痛みは、知らず知らずの内に、睡眠不足や食欲不振を招き、気力を低下させてしまいます。がんの初期治療の時期であっても、痛みがある時には鎮痛剤で痛みを軽減する必要があります。痛みを抑えて、睡眠、食事を十分にとって体力を維持すること、そして、治療意欲が減退しないように努めることが大切です。

1) 日本緩和医療学会編集:専門家をめざす人のための緩和医療学,南江堂,2014
2) 1)に同じ

次回は「第2回 痛みはがまんしない」です。
配信日程:8月10日(水) 配信予定

【プロフィール】
菅原 よしえ(すがわら よしえ)
宮城大学大学院看護学研究科 教授

石巻赤十字看護専門学校を卒業後、病院看護師として勤務。増加するがん患者に対する看護を学ぶため、兵庫県立看護大学大学院に進学。修了後、がん看護専門看護師として活動する。平成22年から現在の宮城大学大学院看護学研究科にて、がん患者の力になれる看護師の育成に携わっている。