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「みんなに知ってほしい!がんの痛みの克服法」 第3回 患者が治療に参加してがん性疼痛を克服しよう

宮城大学

2016/08/11 10:17

第3回 患者が治療に参加してがん性疼痛を克服しよう

がん患者の53%に痛みが生じると言われています 1)。

がん性疼痛をがまんせず、強い痛みになる前に、早期の段階から鎮痛剤で痛みを抑えて、十分に睡眠や食事がとれるよう、体力や気力を維持できるようコントロールすることが大切です。

がん性疼痛をコントロールする鍵となるのは、患者さんが、医師や看護師へ「痛い」「苦しい」と教えてくれることです。

患者さんに伝えてほしい内容は、痛みの場所、種類、強さです。

痛みの出現する場所や痛みの種類によって、使われる鎮痛剤は異なります。痛みの種類にあわせた鎮痛剤が選択できると、早く痛みを抑えることができます。痛みの場所は、お腹の中なのか、お腹の表面なのか、腰まで通すのか、また、足までひびく痛みであるのか等です。

痛みの種類は、ズキズキか、ピリピリか、ビビッか、ズーンと重苦しいかなどです。自分なりの表現で、どの部分が、どんなように痛いのかを医師や看護師に伝えて下さい。医師はがんのある場所でいくらか痛みを予想できますが、薬の具体的な選択には、患者さんが実際に感じている痛みの場所と痛みの種類を教えて頂くことが不可欠です。

患者さんによっては、「医師に、痛いと言うと、せっかく治療してくれているのに悪い」、「痛いと言うと、がんが進行していると言われそうで怖い」などと思い、痛みについて詳しく話すことを遠慮する方がいるようです。

そんなことはありません。痛みについて詳しく伝えることで、患者さん1人1人にあった薬が処方でき、医師は大変助かります。医師が痛みをとる名医になれるかどうかは、患者さんが痛みについて詳しく話してくれるかどうかにかかっているのです。

医師や看護師と患者さんが痛みの強さを共有する方法として、数字で痛みの強さを表す方法があります。NRS(エヌ アール エス:Numerical Rating Scale)と呼ばれ、病院や在宅医療でよく使われるようになってきました。これは、痛いか、痛くないかの2者択一ではなく、痛みの強さを細かく表すことができる方法です。

患者さん自身が考えうる最強の痛みを10とし、全く痛みのない状態を0としたときに、現在の痛みはどの程度か数字で、患者さんが答えるものです。患者さんの主観でいいのです。

「痛みが楽になった」と教えてもらうより、「昨日は6くらいだったけど、今日は4と5を行ったり来たりしている」とか、「昨日6だったけど、今日は1くらいだ」と言うように教えてもらうと、痛みの変化がはっきりわかります。

痛みを数値で表す方法は、最初はうまく表現できないようですが、数日試してみると日々の変化を比較しながら使えるようになります。



痛みの強さの変化が具体的にわかると、医師はより患者さんにあった薬の調節ができるようになります。痛みの強さを数値で表すと、薬の調節がしやすいだけでなく、療養の目標を看護師と患者さんが共有することもできるようになります。

例えば、「痛みが6の時はトイレに歩くのもひどいけど、痛みが2になればトイレに歩ける」と患者さんに教えて頂ければ、まず、トイレに歩いていくことを目標にできます。痛みの変化を看護師も理解し、トイレまでの手すりや寝起きの方法を工夫することができます。また、薬の効果がもっともあらわれる時間に散歩をするなどの生活リズムを整えることもできます。

痛みについて、患者さんが医師や看護師へ伝えることは、患者さんが治療や療養に参加する第1歩です。患者さんの参加がなければ、医師や看護師だけでは何もうまくいかないのです。

患者さんは是非「痛い」「苦しい」と声に出して頂き、できればより詳しく痛みの場所、種類、強さを話して下さい。

【プロフィール】
菅原 よしえ(すがわら よしえ)
宮城大学大学院看護学研究科 教授
石巻赤十字看護専門学校を卒業後、病院看護師として勤務。増加するがん患者に対する看護を学ぶため、兵庫県立看護大学大学院に進学。修了後、がん看護専門看護師として活動する。平成22年から現在の宮城大学大学院看護学研究科にて、がん患者の力になれる看護師の育成に携わっている。