- 「発酵の ふしぎ発見!」第1回 発酵食品・醸造物について
- 「発酵の ふしぎ発見!」第3回 大豆からチーズ!?~豆乳凝固酵母~
- 「発酵の ふしぎ発見!」第4回 水産物を「醸す」 ~オキアミ醤油~
- 「発酵の ふしぎ発見!」第5回 大学生吟醸酒を「醸す」 ~新澤酒造店との酒造りの取り組み~
「発酵の ふしぎ発見!」第2回 「進撃の(小さな)巨人」 ~ヨーグルトだけじゃない乳酸菌~
宮城大学
2016/06/07 12:25
第2回 「進撃の(小さな)巨人」 ~ヨーグルトだけじゃない乳酸菌~
乳酸菌とは・・・
糖類を発酵して、乳酸を生成することで、エネルギーを獲得する細菌のことです。具体的には、グルコース1分子から、50%以上の乳酸を生成する細菌と定義されています。
例えば・・・
ガゼリ菌、ビフィズス菌、生酛乳酸菌など
乳酸菌といえば、ほとんどの人は、「ヨーグルトを造る菌!」と答えるでしょう。ところが乳酸菌は、それだけではなく、ワインや清酒といった酒類製造やしょうゆや味噌といった発酵調味料、キムチやザワークラウト、糠漬けといった発酵漬物にも使われています。
発酵食品の特徴として、以下のようなことが挙げられます。
① 乳酸菌や酵母の生育によって生産された酸やアルコールによって、「保存性」がよくなる。
② 乳酸菌や酵母の生育によって生産された酸やアルコールによって、美味しくなり、「嗜好性」を増す。
③ 乳酸菌や酵母の生育によるプロバイオテクス効果(有用な菌が腸内などで、効果を発揮すること)や生産物のプレバイオティクス効果(有用な菌が腸内などで効果を発揮できるような栄養素を供給すること)、あるいは、その他の成分による「健康機能性」がよくなる。
近年では、流通や冷蔵技術の進歩によって、保存性の需要がなくなってきましたが、発酵食品への健康機能への期待が高まっております。
歴史的に乳酸菌の健康機能を見出したのは、ロシア人の微生物学者および動物学者でもあるイリヤ・メチニコフという人です。彼が、ブルガリアを旅行中、元気な老人が多いことに気づき、ヨーグルトが長寿に効く薬であると提唱したのが始まりとされています。
現在では、乳酸菌のさまざまな機能性が見いだされ、免疫力を高める乳酸菌や尿酸値が気になる人の乳酸菌など・・・。
日本にも、ヨーグルトに負けない乳酸菌食品があります。それは、ご存知の糠漬けや、長野県木曽町で造られる塩を添加せず、乳酸菌のみで発酵させる「すんき漬け」という漬物です。
ユネスコの世界文化遺産以降、世界的に見ても和食材の健康機能は注目されています。
ところで、我々の研究室では、このような発酵食品をベースにした研究を行っています。
ヨーグルトなどの乳製品は、アレルギーを持つ方もおり、万人が食することができません。そこで、和食材の発酵漬物に着目しました。これまでの研究報告では、「発酵食品を食べると、炎症性大腸炎症状が緩和する」といわれております。
そこで、宮城大学が誇る優秀な大学院生近藤彩夏君と浅見恭子君は、身近な食材などから乳酸菌を分離して、大腸の中で、炎症を起こす悪玉菌をやっつけるお掃除乳酸菌の研究をしました。
お掃除乳酸菌
その結果、悪玉菌の毒(専門用語ではリポポリサッカライド;LPS)を消すお掃除乳酸菌を発見!なんと、一般のヨーグルト乳酸菌の4倍効果があり、炎症物質を一桁台まで消し去りました」。腸内のお掃除効果絶大です。
ところで、「毒を消す」といえば、石川県には変わった発酵食品があります。
猛毒を持つふぐの、なんと一番毒素の強い卵巣を、糠漬けにし、乳酸発酵させた「ふぐの卵巣の糠漬け」です。
ふぐの卵巣の糠漬け
乳酸には、我々には計り知れない秘められた不思議な力が、まだまだあるのでしょうか?
「小敵と見て侮る勿れ」
次回は「第3回 大豆からチーズ!? ~豆乳凝固酵母~」です。
配信日程:6月8日(水) 予定
【プロフィール】
金内誠
1971年米沢市生まれ
1994年3月 東京農業大学農学部醸造学科 卒業
1999年3月 東京農業大学大学院農学研究科
博士後期課程生物環境調節学専攻 修了
博士(生物環境調節学)
1999年4月 東京農業大学酒類生産学研究室(小泉武夫教授) 博士研究員
1999年11月 カリフォルニア大学デーヴィス校 博士研究員
2003年8月不二製油㈱入社 フードサイエンス研究所配属
2005年4月宮城大学食産業学部 フードビジネス学科 助手
2009年4月同 准教授
現在に至る
乳酸菌とは・・・
糖類を発酵して、乳酸を生成することで、エネルギーを獲得する細菌のことです。具体的には、グルコース1分子から、50%以上の乳酸を生成する細菌と定義されています。
例えば・・・
ガゼリ菌、ビフィズス菌、生酛乳酸菌など
乳酸菌といえば、ほとんどの人は、「ヨーグルトを造る菌!」と答えるでしょう。ところが乳酸菌は、それだけではなく、ワインや清酒といった酒類製造やしょうゆや味噌といった発酵調味料、キムチやザワークラウト、糠漬けといった発酵漬物にも使われています。
発酵食品の特徴として、以下のようなことが挙げられます。
① 乳酸菌や酵母の生育によって生産された酸やアルコールによって、「保存性」がよくなる。
② 乳酸菌や酵母の生育によって生産された酸やアルコールによって、美味しくなり、「嗜好性」を増す。
③ 乳酸菌や酵母の生育によるプロバイオテクス効果(有用な菌が腸内などで、効果を発揮すること)や生産物のプレバイオティクス効果(有用な菌が腸内などで効果を発揮できるような栄養素を供給すること)、あるいは、その他の成分による「健康機能性」がよくなる。
近年では、流通や冷蔵技術の進歩によって、保存性の需要がなくなってきましたが、発酵食品への健康機能への期待が高まっております。
歴史的に乳酸菌の健康機能を見出したのは、ロシア人の微生物学者および動物学者でもあるイリヤ・メチニコフという人です。彼が、ブルガリアを旅行中、元気な老人が多いことに気づき、ヨーグルトが長寿に効く薬であると提唱したのが始まりとされています。
現在では、乳酸菌のさまざまな機能性が見いだされ、免疫力を高める乳酸菌や尿酸値が気になる人の乳酸菌など・・・。
日本にも、ヨーグルトに負けない乳酸菌食品があります。それは、ご存知の糠漬けや、長野県木曽町で造られる塩を添加せず、乳酸菌のみで発酵させる「すんき漬け」という漬物です。
ユネスコの世界文化遺産以降、世界的に見ても和食材の健康機能は注目されています。
ところで、我々の研究室では、このような発酵食品をベースにした研究を行っています。
ヨーグルトなどの乳製品は、アレルギーを持つ方もおり、万人が食することができません。そこで、和食材の発酵漬物に着目しました。これまでの研究報告では、「発酵食品を食べると、炎症性大腸炎症状が緩和する」といわれております。
そこで、宮城大学が誇る優秀な大学院生近藤彩夏君と浅見恭子君は、身近な食材などから乳酸菌を分離して、大腸の中で、炎症を起こす悪玉菌をやっつけるお掃除乳酸菌の研究をしました。
お掃除乳酸菌
その結果、悪玉菌の毒(専門用語ではリポポリサッカライド;LPS)を消すお掃除乳酸菌を発見!なんと、一般のヨーグルト乳酸菌の4倍効果があり、炎症物質を一桁台まで消し去りました」。腸内のお掃除効果絶大です。
ところで、「毒を消す」といえば、石川県には変わった発酵食品があります。
猛毒を持つふぐの、なんと一番毒素の強い卵巣を、糠漬けにし、乳酸発酵させた「ふぐの卵巣の糠漬け」です。
ふぐの卵巣の糠漬け
乳酸には、我々には計り知れない秘められた不思議な力が、まだまだあるのでしょうか?
「小敵と見て侮る勿れ」
次回は「第3回 大豆からチーズ!? ~豆乳凝固酵母~」です。
配信日程:6月8日(水) 予定
【プロフィール】
金内誠
1971年米沢市生まれ
1994年3月 東京農業大学農学部醸造学科 卒業
1999年3月 東京農業大学大学院農学研究科
博士後期課程生物環境調節学専攻 修了
博士(生物環境調節学)
1999年4月 東京農業大学酒類生産学研究室(小泉武夫教授) 博士研究員
1999年11月 カリフォルニア大学デーヴィス校 博士研究員
2003年8月不二製油㈱入社 フードサイエンス研究所配属
2005年4月宮城大学食産業学部 フードビジネス学科 助手
2009年4月同 准教授
現在に至る