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「発酵の ふしぎ発見!」第5回 大学生吟醸酒を「醸す」 ~新澤酒造店との酒造りの取り組み~
宮城大学
2016/06/10 09:57
第5回 大学生吟醸酒を「醸す」 ~新澤酒造店との酒造りの取り組み~
先日わが研究室で、コンパをやりました。まだ、お酒を飲みなれていない3-4年のアンダーバチュラー(学部生)はチューハイやカクテルの甘系を注文しているのを見ると、まだ大人の階段は、まだ遠いようだなと思いました。
ところで、大人の飲みものの「清酒」の消費量は、1970年代に1747hlと消費量のピークとなりましたが、それ以降年々消費量が減少し、近年の消費量はピーク時の約3分の1程度にまで減少しているそうです。
また、総務省家計調査(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001070349)によると、20~29歳の酒類の購入金額は、1,100円/月、30~39歳では、2,500円です。
一方、60~69歳では、3,800円/月と、高齢者の購入費は3倍以上多い傾向がありました。これの結果は、20-30代の若者が、清酒にあまり関心を示していないということが示されました。
今後の消費の中心となるべき20-30代が清酒を飲んでもらわないと、日本の生酒造業が疲弊してしまいます。そこで、我々は、次世代の嗜好に合わせた清酒の開発に役立てようと若者の嗜好を調査しました。
試験方法は、清酒20種類余りを官能評価し、味の評価や買いたいかどうかを記入してもらいました。その結果、20-30代の若い世代は、お酒の「購買意欲」と「苦味」には、関係性が見いだされ、苦味が購買意欲に関与する因子の一つでした。
また、グループインタビューを行い、清酒に対する考え方を聞き取る形での調査も行いました。その結果、清酒をよく喫飲するグループ「清酒のイメージ」は、「伝統」、「アルコール」、「年配」というイメージでした。
あまり清酒を喫飲しないグループの「清酒のイメージ」は、グループIと同様「年配」、「アルコール」、「伝統」のほかに、「清酒は高級」というイメージが強いことわかりました。
このようなことから、20-30代の若い世代の清酒の理解が足りないと感じたので、地元の有名酒造メーカーである新澤酒造店さんのご協力で、酒造体験を企画しました。このようなことを通じで清酒が好きになってくれたらな~という狙いもありました。
参加した学生たちは、2-3月の期間交代で酒造体験を行いました。戻ってきた学生たちは口々に楽しいという言葉が出ました。それは、多分酒造場にある寮の寮監の吉田さんの作っていただける食事が美味しかったのだと思います。また、学生の中にはそれを目当てで行く学生もおりました。
しかし、実際に清酒を造ってみると、愛着もあり、「飲まず嫌い」であったようで、みんな酒造体験の中から様々なことを学びました。
酒造体験の中での学び
☆大学の講義 食品加工学などの実践
・酒造技術の学び
・清酒の作り方がわかったこと
・麹(清酒や味噌などの原料)が大変な工程(夜中の作業や早朝の作業)の中から造られること。
☆みんなの力を合わせて「商品」を造る
仕事の分担と効率かつ丁寧に仕事をし、周りの人との協調性。
~清酒つくりは、大勢の方による分担。仕事の遅れやミスは皆さんの迷惑になる。協調性が大切~
☆周りを見て何をやるべきか?何がやれるかを考えて動くことなど技術的かつ自己成長的な学びが得られた実習でした。
出来上がった酒の名前はその名も「大学生の大吟醸」!
大学生の大吟醸
宮城大学食産業学部大学生協売店、藤崎本店、そのほか有名酒類取扱店で絶賛発売中。{宮城大学食産業学部大学生協売店の販売のみ500mL 980円(税込)その他1800mL 2690円(税別)}
百聞は一見にしかず。百見は一考にしかず。百考は一飲にしかず!
酒づくり
【まとめ】
発酵・醸造食品は、古来よりも親しまれ現代でも食卓に欠かせない食品です。しかし、それらは、その時々で、進化を遂げてきました。このような進化を続けている食品は、「不易流行」という言葉で表現することができます。
「不易流行」は、松尾芭蕉が提唱した俳句の言葉で、表現に新奇な点がなく落ち着きのあるものが不易、その時代で斬新さを発揮し、広く支持されるものが流行で、いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこととされています。
発酵醸造も昔の技術や本質を変えることがなく、しかし、使われ方、食材などを変化させながら今後も続いていくことでしょう。
さらに、このような伝統的な発酵・醸造食品を製造する技術を用いた微生物技術は、製薬や機能性食品製造など最先端事業への応用へ繋がっていくでしょう
これから益々、「微生物は地球を救う」のです。
【プロフィール】
金内誠
1971年米沢市生まれ
1994年3月 東京農業大学農学部醸造学科 卒業
1999年3月 東京農業大学大学院農学研究科
博士後期課程生物環境調節学専攻 修了
博士(生物環境調節学)
1999年4月 東京農業大学酒類生産学研究室(小泉武夫教授) 博士研究員
1999年11月 カリフォルニア大学デーヴィス校 博士研究員
2003年8月不二製油㈱入社 フードサイエンス研究所配属
2005年4月宮城大学食産業学部 フードビジネス学科 助手
2009年4月同 准教授
現在に至る
先日わが研究室で、コンパをやりました。まだ、お酒を飲みなれていない3-4年のアンダーバチュラー(学部生)はチューハイやカクテルの甘系を注文しているのを見ると、まだ大人の階段は、まだ遠いようだなと思いました。
ところで、大人の飲みものの「清酒」の消費量は、1970年代に1747hlと消費量のピークとなりましたが、それ以降年々消費量が減少し、近年の消費量はピーク時の約3分の1程度にまで減少しているそうです。
また、総務省家計調査(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001070349)によると、20~29歳の酒類の購入金額は、1,100円/月、30~39歳では、2,500円です。
一方、60~69歳では、3,800円/月と、高齢者の購入費は3倍以上多い傾向がありました。これの結果は、20-30代の若者が、清酒にあまり関心を示していないということが示されました。
今後の消費の中心となるべき20-30代が清酒を飲んでもらわないと、日本の生酒造業が疲弊してしまいます。そこで、我々は、次世代の嗜好に合わせた清酒の開発に役立てようと若者の嗜好を調査しました。
試験方法は、清酒20種類余りを官能評価し、味の評価や買いたいかどうかを記入してもらいました。その結果、20-30代の若い世代は、お酒の「購買意欲」と「苦味」には、関係性が見いだされ、苦味が購買意欲に関与する因子の一つでした。
また、グループインタビューを行い、清酒に対する考え方を聞き取る形での調査も行いました。その結果、清酒をよく喫飲するグループ「清酒のイメージ」は、「伝統」、「アルコール」、「年配」というイメージでした。
あまり清酒を喫飲しないグループの「清酒のイメージ」は、グループIと同様「年配」、「アルコール」、「伝統」のほかに、「清酒は高級」というイメージが強いことわかりました。
このようなことから、20-30代の若い世代の清酒の理解が足りないと感じたので、地元の有名酒造メーカーである新澤酒造店さんのご協力で、酒造体験を企画しました。このようなことを通じで清酒が好きになってくれたらな~という狙いもありました。
参加した学生たちは、2-3月の期間交代で酒造体験を行いました。戻ってきた学生たちは口々に楽しいという言葉が出ました。それは、多分酒造場にある寮の寮監の吉田さんの作っていただける食事が美味しかったのだと思います。また、学生の中にはそれを目当てで行く学生もおりました。
しかし、実際に清酒を造ってみると、愛着もあり、「飲まず嫌い」であったようで、みんな酒造体験の中から様々なことを学びました。
酒造体験の中での学び
☆大学の講義 食品加工学などの実践
・酒造技術の学び
・清酒の作り方がわかったこと
・麹(清酒や味噌などの原料)が大変な工程(夜中の作業や早朝の作業)の中から造られること。
☆みんなの力を合わせて「商品」を造る
仕事の分担と効率かつ丁寧に仕事をし、周りの人との協調性。
~清酒つくりは、大勢の方による分担。仕事の遅れやミスは皆さんの迷惑になる。協調性が大切~
☆周りを見て何をやるべきか?何がやれるかを考えて動くことなど技術的かつ自己成長的な学びが得られた実習でした。
出来上がった酒の名前はその名も「大学生の大吟醸」!
大学生の大吟醸
宮城大学食産業学部大学生協売店、藤崎本店、そのほか有名酒類取扱店で絶賛発売中。{宮城大学食産業学部大学生協売店の販売のみ500mL 980円(税込)その他1800mL 2690円(税別)}
百聞は一見にしかず。百見は一考にしかず。百考は一飲にしかず!
酒づくり
【まとめ】
発酵・醸造食品は、古来よりも親しまれ現代でも食卓に欠かせない食品です。しかし、それらは、その時々で、進化を遂げてきました。このような進化を続けている食品は、「不易流行」という言葉で表現することができます。
「不易流行」は、松尾芭蕉が提唱した俳句の言葉で、表現に新奇な点がなく落ち着きのあるものが不易、その時代で斬新さを発揮し、広く支持されるものが流行で、いつまでも変化しない本質的なものを忘れない中にも、新しく変化を重ねているものをも取り入れていくこととされています。
発酵醸造も昔の技術や本質を変えることがなく、しかし、使われ方、食材などを変化させながら今後も続いていくことでしょう。
さらに、このような伝統的な発酵・醸造食品を製造する技術を用いた微生物技術は、製薬や機能性食品製造など最先端事業への応用へ繋がっていくでしょう
これから益々、「微生物は地球を救う」のです。
【プロフィール】
金内誠
1971年米沢市生まれ
1994年3月 東京農業大学農学部醸造学科 卒業
1999年3月 東京農業大学大学院農学研究科
博士後期課程生物環境調節学専攻 修了
博士(生物環境調節学)
1999年4月 東京農業大学酒類生産学研究室(小泉武夫教授) 博士研究員
1999年11月 カリフォルニア大学デーヴィス校 博士研究員
2003年8月不二製油㈱入社 フードサイエンス研究所配属
2005年4月宮城大学食産業学部 フードビジネス学科 助手
2009年4月同 准教授
現在に至る