戻る

仙台放送NEWS

検索


「少年犯罪は増えているのか?」第3回 事件の質的な変化

東北福祉大学

2016/09/07 10:07

第3回 事件の質的な変化

初回に示しました『犯罪白書』のグラフをもう一度ご覧ください。

図.少年・若年者による一般刑法犯(主要罪名)検挙人員の人口比の推移
(平成元年~22年)


20歳未満の殺人事件は,人口10万人あたり一人弱の小さい幅で変動していますが,強盗事件については,平成5年頃と比べて平成10年から15年に3~4倍の増加を示しています。

当時「オヤジ狩り」という犯行があったことを覚えている方も多いと思います。夜間,未成年者の集団が中年男性を襲い,金を強奪しました。またこのころ,私は二人組の少年による「強盗」も多くの調査を担当しました。

実際は,道行く女性とすれ違いざまに所持品のバッグを奪って逃走するひったくり行為ですが,走り去るバイクや自転車の後部に乗った少年がいきなり奪うことから,手首に巻き付けるように巾着袋を下げていた老女が引っ張られて転倒し,重傷を負った事件もありました。犯行動機としては小遣い銭欲しさ程度でも,被害者が怪我をすれば強盗事件として立件されます。

一方,人を脅して金や物を奪う恐喝事件もあります。非行少年らは「カツアゲ」と言いますが,この典型的な手口は,加害者が故意にぶつかったにもかかわらず, 被害者に肩をぶつけられたと言いがかりをつけ,脅し取るというものです。

言わば「あなた(被害者)の行為によって私が痛い思いをした。だからこの場で賠償を求めます」という筋立てで,見知らぬ相手と自分をまず関係づけ,被害の具体的訴えと代償を求めるという(不合理な)ロジックを組み立てて要求します。

またカツアゲの被害者の多くは中高生の男子で,老女が狙われることはまずありません。無防備な中年や老女を狙うなど,相手との関係性や「道理」の欠落した粗暴極まる直接的行為に,犯行の悪質化・凶悪化が指摘されました。

語弊はありますが「サルよりルールを知らない,クマより乱暴な」行為の増加に,人間の精神機能の退化とも言える現象を見た思いでした。

次回は「第4回 少年事件の推移」です。
配信日程:9月8日(木)配信予定

【プロフィール】
半澤 利一(はんざわ としかず)
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科准教授
ホームページはこちらから
家庭裁判所調査官や臨床心理士として勤務した経験に基づき,非行少年や犯罪者の心理アセスメント,心理社会的支援などについて研究する。司法矯正職員を目指す学生の教育にも力を入れている。