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「少年犯罪は増えているのか?」第4回 少年事件の推移

東北福祉大学

2016/09/08 09:57

第4回 少年事件の推移

再び犯罪統計をご覧ください(法務省,2014)。

図.少年・若年者による一般刑法犯(主要罪名)検挙人員の人口比の推移
(平成元年~22年)

図中,いちばん上のグラフは少年人口10万人あたりの少年の刑法犯検挙人員の推移を示したものです。

殺人や窃盗事件など全てを「刑法犯」という大きな括りで捉えても,近年の少年事件は減少傾向にあるのが分かります。一方,検挙人員(棒グラフ)を見ると,昭和25年に最初のピークがあり,次に39年,58年と3つのピークがあります。

終戦後の混乱や貧しさが社会全体を覆い,乱暴な窃盗行為が横行したのはもう半世紀以上前となりました。その後,高度経済成長時代に入り,人々が物質的な豊かさを求め,大量生産・大量消費という日常に慣れた子どもたちによる「遊び型(初発型)非行」という言葉が生まれました。

同時に,一流の学校を出て一流の企業に就職することに価値がおかれ,学歴に偏重した管理教育が台頭する中,校内暴力や暴走族が特に問題化してきたのも昭和40年代後半からです。

終戦に続くこれらの犯罪の動因について「生存の論理」「反抗の論理」とし,現在まで続く状況を「衝動の論理」と説明する研究者もいます(清水,1999)。特徴的な犯行動機はその時代その時代で異なっても,昔は非行少年と言えば「不良」あるいは「番長」というイメージがあったように思います。

強がりで反抗的ながらどこか寂しげで憎めない,そういう不良少年がいつの間にか姿を消してしまいました。昔の番長は,舎弟分のような仲間を引き連れて時に権威に抗いましたが,現代の非行少年は,怒りを共有する仲間と集団で反抗することは少なくなり,単発的に「キレる」という情緒的混乱を示す傾向が高いと指摘されています (村尾,2012)。

《文献》
法務省法務総合研究所(2014).犯罪白書(平成26年版)―窃盗事犯者と再犯―
清永 賢二(1999).少年非行の世界―空洞の世代の誕生 有斐閣選書
村尾泰弘(2012).非行臨床の理論と実践―被害者意識のパラドックス 金子書房

次回は「第5回 ではどうするか?」です。
配信日程:9月9日(金)配信予定

【プロフィール】
半澤 利一(はんざわ としかず)
東北福祉大学総合福祉学部福祉心理学科准教授
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家庭裁判所調査官や臨床心理士として勤務した経験に基づき,非行少年や犯罪者の心理アセスメント,心理社会的支援などについて研究する。司法矯正職員を目指す学生の教育にも力を入れている。