佐藤 拓雄
2026/09/10
秋の夜、虫の音が聞こえてくると、思い出すことがあります。
小学生のころ、毎年のように鈴虫を飼っていました。
リンリンというあの音が実にきれいなだけでなく、それが、羽を立てて震わせて鳴いていると知り(正確には、羽を擦り合わせて音を出す、でしょうか)、なんと不思議なんだろうと、虫眼鏡でじーっとその様子を観察したりしていました。
エサは、キュウリやナスを竹串に刺して、飼育箱の土に刺すという形。今考えると、これでよかったのか分かりませんが、鈴虫たちは、そのキュウリやナスの上に乗って、それを食べ(多分)、リンリンと鳴いていました。
そんなある時、暴風雨が来ました。
いつの雨だったのか、台風だったのかどうかも覚えていませんが、窓に大粒の雨がものすごい勢いで吹き付け、恐怖を感じるほどの暴風雨でした。
そんな雨が上がって、ベランダを覗き、家族皆で、「あっ!」と声を上げてしまいました。
鈴虫の飼育箱を、ベランダに置いたままにしていたのです。
ちょっと離れたところから見ただけで、飼育箱がまるで水槽のようになっているのが分かります。
取り返しのつかないことをしたと、皆で恐る恐る飼育箱に近づきました。
飼育箱はフタの近くまで水浸し。本当にまるで水槽です。当然鈴虫たちは溺れて死んでいました。
・・・が、その中に!
水面にエサのナスがプカプカと浮かび、その上に、1匹オスの鈴虫が乗って生きていたのです。
沈没船か何かから生き残り、流れてきたものに乗って漂流しているかのようでした。
よく無事で!と、たくましさに驚く一方で、何とも申し訳なく、死んでしまった他の鈴虫のことを考えると、取り返しのつかないことをしたと、落ち込みました。
私にしてみれば、生き物を飼うことの責任を思い知らされた出来事で、秋になり虫の音を聞くたびに、その時のことを思い出します。
【写真】は、最近家の近くで見かけた雑草。アスファルトを突き破って草丈を伸ばしていました。生物のたくましさという点で、相通じるものがあると感じ、水面でナスに乗っていた鈴虫をまた思い出しました。