佐藤 拓雄
2020/01/27
私の通っていた大学には、当時、「貧食」と呼ばれる学食がありました。「ひんしょく」と読みます。
「貧乏食堂」の略とも、「貧民食堂」の略とも言われていました。
正式には、確か「教養部第二食堂」だったはずですが、キャンパス敷地の校舎から遠いところにあるプレハブの粗末な建物は、まさに「貧食」の名がふさわしいたたずまい。
ただ、「貧食」と呼ばれていたのは、外観より、破格の安さが理由でした。
メニューはカレーとスパゲティのみ(だったはず)。というのは、カレー以外のものを頼んだことがないからです。
とにかく、「貧食」と言えばカレーなのです。
最も安いのが、「カレー(小)」、私の記憶では150円。貧乏学生を救う、「神」価格です。
これを筆頭に、充実のカレーラインナップ。
私の定番は、「焼肉カレー」。薄切りの豚肉を焼いたものがのった、贅沢な一品です。とにかくこれが好きでした。それでも確か300円台だったと思います。
大きく乱切りしたニンジンやジャガイモがゴロゴロ入った「おふくろカレー」は、まさにおふくろの味。
財布に余裕があるときは、生卵をトッピングしたりもしたなあ。
少ない金額で腹一杯。お昼時には、毎日、貧乏学生の長蛇の列ができます。しかも、男子のみ。そして、グループでなく、一人で来る人が多かった。そんなムサい男の行列とあの外観では、女子は入りづらかっただろうと思います。
そのうち、時間をずらして行くことが増えましたが、それでも女子学生の姿はありませんでしたね。
逆にそういう気安さがあって、私の「貧食係数」は当時かなりのものだったと思います。
その「貧食」、残念ながら今はもうありません。
地下鉄東西線の工事のために、十数年前、惜しまれつつ閉店し、そのまま復活しませんでした。
実は、「貧食」最後の日に、同じ大学を出た記者と一緒に取材に行き、カレーを食リポし、学生に「貧食愛」をインタビューしました。
翌日のニュースで放送し、私の「貧食愛」を語る予定だったのですが、急な事件か何かで放送できなくなり、そのままお蔵入りしてしまいました。
最後までスポットが当たらない運命だったのかもしれません(涙)
【写真】は全く関係なく、独り暮らしをする長男宅を訪問した際に、近所で食べたインドカレー。バターチキンカレーが絶品でした。
明日は、寺田さんです。