佐藤 拓雄
2022/08/29
個人的には、結構マイナスなこともいろいろあったこの夏ですが、仙台育英の甲子園優勝が全て帳消しにしてくれた、そんな気分で、一週間経った今も、まだどこかふわふわと浮き足立った気持ちが続いています。
私も須江航監督の優勝インタビューに涙した一人です。見ていたのが職場だったので、なるべくこらえ、目頭をこっそり拭きましたが。
「青春ってすごく『密』なので・・・」。子どもたちを見守る大人としての温かさに溢れた言葉は、球児や高校生に限らず、全ての若者へのエールだと思いました。私が応援していたのは、青春そのものでもあったと気づかされ、さらには、コロナ禍で青春を送る自分の子どもたちにも重なって、胸が熱くなりました。
そして、こんな時代を生きる若い世代に対して、どういう世の中を作っていけるのかという、大人としての責任にも思いを馳せました。
また、この一週間で、今回の優勝の意味が、私の中でも、少しずつ理解されてきたように思います。
思うのは、東北勢の初優勝、という意義に加えて、高校野球が大きく変わる、革命的な優勝だったのでは、ということです。
今回の仙台育英のスタイルは、今までの高校野球には見られなかったものです。
5人もの投手による継投、「怪物」と呼ばれるような選手なし、初戦で18人全員が出場し活躍、チーム内の公平な競争、監督と選手の関係など・・・。「身の丈に合った丁寧な野球」という須江監督の言葉も新鮮でした。
そして、選手も監督も、仲間や相手に対する最大級の敬意をもって、「宮城大会初戦のような」という平常心で、かつ、高い集中力をもって試合をしていました。テレビで見ていても、決勝戦でさえ「硬さ」を全く感じませんでしたし、決勝戦を前に疲労困憊と見える選手が一人もいなかったのも印象的でした。
このチームがこれからの高校野球の手本、スタンダードになる、という人さえいて、大きく頷かされると同時に、こうしたチームが優勝したこと、しかもそれが宮城県から出てきたことを、心底うれしいと思います。
一方で、部員数の少ない公立高校には、仙台育英のようなチーム作りが難しいことも事実。そもそも仙台育英の門をたたくのは、中学までに腕に覚えのある有望選手たちで、そうした選手たちが100人近く集まるチームの選手層は、出発点からしてレベルがまるで違うのは明らかです。
ただ、それでも、多くの選手が投手に挑戦し、複数ポジションを守り、仲間を尊重し、公平に競争しあってレベルを底上げしていく。そして、自分たち自身のことをよく理解し、「身の丈に合った野球」を目指すことは、決して単なる理想論ではないと思うのです。
次の数十年で、高校野球が大きく変わり、振り返れば、あの2022年の仙台育英が始まりだった、と言われるような、大げさかもしれませんが、「歴史の転換点を見届けた夏」になる予感。
3年連続でどこにも出向かない夏でしたが、総括すれば、一生の思い出となりそうな夏でした。
【写真】上から、仙台市役所、仙台駅、仙台駅前アエルの「祝優勝」。どうしても自分で写真を撮っておきたかったので、3ヶ所行ってきました。
明日は、高橋咲良アナウンサーです。